第55回都市対抗野球大会

第55回都市対抗野球大会：日産自動車、初優勝の快挙

1984年7月24日から8月3日にかけて、後楽園球場で開催された第55回都市対抗野球大会は、数々のドラマを生み出し、記憶に残る大会となりました。

まず目を引くのは、初出場チームとして倉敷市の川崎製鉄水島が登場したことでしょう。しかし、それ以上に衝撃的だったのは、前年度優勝で推薦出場を果たした川崎市の東芝が、1回戦で松山市電電四国に敗れたという事実です。この敗北によって、2年連続で前年覇者が初戦で敗退するという、大会史上異例の事態が発生しました。

大会全体を特徴づけたのは、ずば抜けた打撃力でした。全31試合中、わずか1試合のみにホームランが出なかったという驚異的な数字は、金属バットへの選手たちの適応が急速に進んでいたことを如実に示しています。その結果、大会通算ホームラン数は78本という驚異的な記録を樹立し、第50回大会の62本を大きく上回りました。高打率、長打力のあるチームが勝ち上がっていく様は、まさに打撃戦の祭典と言えるでしょう。

決勝戦は、川崎市の日本鋼管と横須賀市の日産自動車という、強力打線を擁する2チームによる激戦となりました。両チーム合わせて33本の安打、そして4本のホームランが飛び交う、まさに壮絶な打ち合いは、観衆を熱狂の渦に巻き込みました。接戦の末、10対9という僅差で勝利を収めたのは、日産自動車でした。

日産自動車にとって、これは創立51年目、野球部創部26年目にして初の黒獅子旗獲得という、歴史的な快挙となりました。長年の努力と精進の結晶が、この栄光という形で実を結んだのです。

表彰選手においても、数々の名選手がその名を挙げました。橋戸賞は日産自動車の若山哲男一塁手、久慈賞は日本鋼管の前川善裕左翼手が受賞。小野賞は札幌市の北海道拓殖銀行チーム、若獅子賞は新日鐵大分岩切利浩投手がそれぞれ受賞しました。

さらに、10年連続出場を果たした選手たちへの表彰も行われ、本田技研鈴鹿の前村泰正投手、新日鐵釜石（電電東北）の佐藤公弘投手、日本通運の望月伸一内野手、日本鋼管の前川善裕外野手、河合楽器の山本宗三郎内野手、日本生命の井尻陽久内野手、三菱重工神戸の川辺邦好内野手、住友金属の松隈憲治内野手、日本鋼管福山の内山田慶弘投手など、長きに渡り都市対抗野球を支え続けたベテラン選手たちの功績が称えられました。

応援団コンクールでは、最優秀賞を熊谷組、優秀賞を日産自動車と北海道拓殖銀行、敢闘賞を日本鋼管と新日鐵大分が受賞しました。

第55回都市対抗野球大会は、数々のドラマと、そして金属バット全盛時代の到来を印象づける大会として、野球史に刻まれることでしょう。

決勝戦の詳細：

8月3日に行われた決勝戦は、日産自動車が日本鋼管を10対9で下し、初優勝を飾りました。
勝利投手：高橋投手（日産自動車）
敗戦投手：古川投手（日本鋼管）
本塁打：秋元選手（日本鋼管）、大野選手（日産自動車）、中田選手、松井選手（以上日本鋼管）

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