第56回都市対抗野球大会

第56回都市対抗野球大会 概要

1985年（昭和60年）夏、日本の社会人野球最高峰である第56回都市対抗野球大会が後楽園球場で開催されました。この大会は、例年以上に多くの話題に彩られ、各チームの熱戦が繰り広げられました。

新たな顔ぶれと健闘

今大会には、盛岡市の岩手県経済連と八王子市のスリーボンドが初めて本戦の舞台に立ちました。両チームとも健闘を見せ、特にスリーボンドは強豪を打ち破り、大会を大いに盛り上げるベスト8入りを果たしました。岩手県経済連も初戦突破を成し遂げ、それぞれの地域に歓喜をもたらしました。

NTTチームの登場

この年は、社会の大きな変化が野球界にも波及しました。電電公社の民営化に伴い、それまで「電電」の名を冠していた各地のチームは「NTT」へと名称を変更。全国に11存在した電電公社チームのうち、NTT東京、NTT信越、NTT東海、NTT中国、NTT四国、NTT九州の6チームが本大会に出場し、新生NTTチームとして初めて都市対抗の檜舞台に登場しました。

日本生命、歴史的偉業と初優勝

大阪市を代表する日本生命は、今大会で前例のない20年連続出場という偉大な記録を達成し、大会側から特別に表彰されました。長年にわたり都市対抗の歴史を紡いできた彼らは、記念すべき節目となる大会でさらなる高みを目指しました。強敵ひしめくトーナメントを勝ち上がり、ついに決勝戦へと駒を進めたのです。

劇的な決勝戦と初優勝

決勝戦の相手は、過去に黒獅子旗獲得経験を持つ強豪、神奈川県川崎市の東芝でした。手に汗握る激戦が繰り広げられましたが、日本生命は8回に一挙に試合をひっくり返す鮮やかな逆転攻撃を見せ、そのままリードを守り切りました。宿敵東芝を破った日本生命は、出場31回目にして、ついに悲願の初優勝を達成。選手たちは歓喜に沸き、スタンドの応援団とともに喜びを分かち合いました。決勝戦では、東芝の新木選手と武智選手が本塁打を放つなど、記憶に残る一戦となりました。日本生命の勝利投手は原投手、東芝の敗戦投手は菊池投手でした。

大会を彩った個人・チーム

個人およびチームの活躍に対しても、様々な表彰が行われました。

橋戸賞（最高殊勲選手）: 島田行雄中堅手（日本生命、松下電器からの補強）。攻守にわたる活躍でチームを牽引しました。
久慈賞（敢闘賞）: 準優勝チーム、東芝の菊池総投手。決勝でも力投を見せました。
小野賞（大会に貢献したチーム）: 初出場ながらベスト8に進出し、旋風を巻き起こした八王子市・スリーボンド。
若獅子賞（新人賞）: 新生NTTチームから、NTT東京の真壁久左翼手。未来を嘱望される活躍を見せました。

また、長年の功績が称えられ、以下の選手が10年連続出場選手として表彰されました。

江藤梓
後藤寿彦
内山仁志
花野巧
大須賀康浩
佐名木睦夫
藤山澄夫
八木孝治

スタンドからの熱い声援

都市対抗野球のもう一つの主役である応援団も、それぞれのチームを熱くサポートしました。応援団コンクールでは、神戸市の川崎製鉄神戸が最優秀賞を獲得。優秀賞には東芝と岩手県経済連、敢闘賞は日本生命が選ばれました。そして、チームの快進撃を強力な応援で後押しした八王子市・スリーボンドには特別賞が贈られ、スタンドからも大会を盛り上げました。

第56回都市対抗野球大会は、長年の夢を叶えた日本生命の初優勝、初出場チームの健闘、NTTチームの船出など、多くのドラマを生み、社会人野球の魅力を存分に伝える大会となりました。

もう一度検索