第6ポールスタービル火災

第6ポールスタービル火災は、1973年（昭和48年）5月28日に、東京都新宿区歌舞伎町に位置する第6ポールスタービルで発生した痛ましい雑居ビル火災として記憶されています。この火災により、尊い命が一つ失われる結果となりましたが、負傷者はこの一人を除いて発生しませんでした。

火災発生時の状況

火災は1973年 5月28日の午前10時頃に発生しました。火元となったのは、ビルの4階に入居していた「キャステル」という名のクラブでした。建物が多様なテナントで構成される雑居ビルであったこと、そして後述するような火災の発見と初期対応の状況が、被害の拡大に影響を与えました。

ビルの概要とその構成

火災が発生した第6ポールスタービルは、もともと1958年2月に「アサヒビヤセンター」として竣工した建物です。その後、1971年に現在の名称である「第6ポールスタービル」に改称されました。建物の構造は地上8階建て、地下3階（中地下2階を含む）に加え、塔屋（PH）が2階ありました。塔屋部分は主にエレベーターの機械室として使用されていました。

ビルには多岐にわたるテナントが入居しており、その構成は以下のようになっていました。

地下1階: バー
1階から3階: 銀行
4階、5階: ゴーゴークラブ「キャステル」（出火元を含む階）
6階: バー
7階: 麻雀店、バー
8階: ビヤホール

このように、飲食店や娯楽施設、さらには金融機関までが一つのビル内に混在しており、これが雑居ビル特有の避難や消防活動における複雑さの一因となります。

火災の経緯と避難

この火災の直接的な原因は、タバコの不始末とみられています。火はまず椅子に燃え移り、その後、床に敷かれた絨毯やウレタンといった可燃性の高い内装材に引火し、瞬く間に延焼が拡大しました。不幸にも、出火直後の初期消火は行われませんでした。

異変に最初に気づいたのは、7階で営業していた麻雀店のアルバイト従業員でした。彼は排気口から立ち上る白い煙を発見し、8階を点検しましたが火元は見つかりませんでした。7階に戻ると、さらに煙が濃くなっていることに気づき、隣室にいた女性事務員3名と共に確認した結果、都市ガスメーター付近から煙が上がっているのを発見しました。

アルバイト従業員の指示を受けた女性事務員の一人が、迅速に119番通報を行いました。通報者を含む計4名（アルバイト従業員と女性事務員3名）は、幸いにもまだビル内の電力が供給されていたため、エレベーターでの避難を選択しました。しかし、後に彼らの証言から、避難時にエレベーターの上部ファンから煙が流入していたことが明らかになっています。

一方、3階に入居していた銀行では、会議中だった13名が火災報知機のベルと煙の充満に気づき、迅速な対応を見せました。彼らは自らの避難だけでなく、銀行内にいた顧客や他の従業員を安全な場所へ誘導しました。さらに、到着した消防隊の活動を助けるため、ビルの正面にあるシャッターを半開きの状態にするという適切な判断を行っています。

消火活動の困難

出火元となった4階およびその上階である5階は、内装に可燃性の高い素材が多く使用されており、火が燃え広がりやすい構造となっていました。また、発生した煙は非常に濃く、視界が著しく制限されたため、消防隊による内部への進入や消火活動は極めて困難を極めました。このような条件が、火災の早期鎮圧を阻む要因となりました。

ビルの現在

火災発生から約半世紀が経過した2021年現在も、第6ポールスタービルは歌舞伎町の同じ場所に建ち続けています。建物はその後、大規模なリニューアルが行われ、外壁には新しいパネルが貼られるなど、外観は火災当時の面影を残さないほどに改修されており、まるで新築のような姿になっています。現在、ビルの1階にはコンビニエンスストアが入居しています。

この火災は、雑居ビルにおける火災発生時の危険性や、初期消火・避難誘導の重要性、そして建物の構造や内装材が延焼に与える影響などを改めて浮き彫りにする事例となりました。歌舞伎町では、本件以外にも多数のビル火災が発生しており、類似の悲劇として「歌舞伎町ビル火災」などが知られています。また、遠く離れた場所で発生した事件ではありますが、「北新地ビル放火殺人事件」も、雑居ビルという共通点において語られることがあります。

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