第6回全日本都市対抗野球大会

第6回全日本都市対抗野球大会

1932年（昭和7年）8月4日から8月9日までの間、東京にある明治神宮野球場を舞台に、第6回を迎える全日本都市対抗野球大会が開催されました。この年の大会は、参加するチーム数が前回の15から1チーム増加し、合計16チームで行われることになった点が大きな特徴の一つです。これは、大会が2大会ぶりにその規模を拡大したことを意味します。

新たな才能の台頭と白獅子旗の誕生

今大会に出場した16チームの中には、初めて都市対抗野球の門を叩いたチームが5つも含まれていました。具体的には、全川崎、全大宮、全長野、大阪鉄道局吹田、そして全広島といった都市の代表チームです。これらの新顔の登場により、大会にはフレッシュな空気が吹き込まれ、既存の強豪チームとの対戦が新たなドラマを生み出すことへの期待が高まりました。

また、今大会から、優勝チームに授与される栄光の象徴である「黒獅子旗」に加えて、惜しくも優勝には手が届かなかったものの、決勝まで勝ち進んだ準優勝チームに対しても「白獅子旗」が贈られることになりました。これは、大会の格式を一層高めるとともに、準優勝チームの栄誉を称える新たな伝統の始まりとなりました。

栄光への険しい道のり

全16チームが優勝を目指すトーナメント方式となったこの大会を制し、頂点に立ったのは、大会に6年連続で出場している強豪、全神戸（神戸市）でした。全神戸は、優勝への道のりを容易なものとはしませんでした。

彼らは大会の初戦で、過去2年連続で優勝を飾っていた絶対的な王者、東京倶楽部（東京市）と対戦するという、いきなりの正念場を迎えました。しかし、全神戸はこの難敵を見事に打ち破り、大きな自信と勢いを得て、その後の勝ち上がりを確かなものにしました。一戦ごとに力を増していくかのように、全神戸は決勝戦まで駒を進めました。

驚異的な投球をみせた木村投手

全神戸を初の優勝へと導いた最大の立役者として、チームのエース、木村秀一投手の存在は欠かせません。関西学院大学出身の木村投手は、今大会で圧倒的なピッチングを披露しました。彼がマウンドに立った4試合において、対戦した打者は合計で139人を数えましたが、木村投手が許した失点はわずか「1」という、驚異的な数字を記録しました。相手打線は木村投手の精緻なコントロールと切れのある変化球に翻弄され、ほとんど得点することができませんでした。彼の鉄腕ぶりが、全神戸の堅守を支え、勝利への道を切り開いたのです。

黒獅子旗の新たな歴史

全神戸の優勝は、都市対抗野球の歴史において非常に画期的な出来事でした。第1回大会が開催されて以来、優勝チームに贈られる黒獅子旗は、常に満洲の大連市代表チームか、あるいは日本の首都である東京市代表チームの手に渡っていました。しかし、この第6回大会で全神戸が優勝したことで、黒獅子旗は初めて、大連や東京以外の都市、すなわち関西地方にある神戸市にもたらされたのです。

これは、日本の野球界における都市対抗の力が全国に広がり、各地のレベルが均衡してきたことを象徴する出来事であり、日本のアマチュア野球史における重要な一歩として記憶されることになりました。大会は決勝戦まで熱戦が繰り広げられ、予定されていた全日程を無事に終了し、都市対抗野球の歴史に新たな一頁を刻んで幕を閉じました。

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