第62回ニューヨーク映画批評家協会賞

ニューヨーク映画批評家協会賞は、アメリカ合衆国の主要な映画批評家組織の一つであるニューヨーク映画批評家協会が主催し、その年に公開された優れた映画作品や関係者を表彰する、権威ある映画賞です。ここで取り上げる第62回は、1996年に公開された作品群を対象としています。受賞結果は1996年 12月12日に発表され、翌年の1997年1月5日に盛大な贈賞式が執り行われました。

この年の最も栄誉ある作品賞には、コーエン兄弟が監督した異色のクライムコメディ『ファーゴ』が選ばれました。雪深いミネソタ州を舞台にしたこの作品は、その独特なユーモアとサスペンスが見事に融合した点で高い評価を受けました。

演技部門では、優れた個性を持った俳優たちがその才能を認められました。主演男優賞に輝いたのは、ピアニストの半生を描いた『シャイン』での鬼気迫る演技が高く評価されたジェフリー・ラッシュです。一方、主演女優賞は、ラース・フォン・トリアー監督の衝撃作『奇跡の海』で、純粋ゆえに過酷な運命をたどる女性を演じきったエミリー・ワトソンが受賞しました。

助演部門にも実力者が名を連ねました。助演男優賞は、ロバート・アルトマン監督のジャズ映画『カンザス・シティ』に出演したベテラン俳優のハリー・ベラフォンテに贈られました。そして、助演女優賞には、奇しくも同じく実在の人物を演じた『ラリー・フリント』での演技が印象的だったコートニー・ラヴが選ばれています。

映画の根幹をなす創造性を評価する部門では、以下のような結果となりました。

監督賞: 『奇跡の海』で革新的な手法を用いたラース・フォン・トリアーが受賞。主演女優賞に続き、この年の同作への評価の高さがうかがえます。
脚本賞: 不安を抱える男性を描いたコメディ『ミスター・コンプレックス/結婚恐怖症の男』を執筆したアルバート・ブルックスとモニカ・ジョンソンが共同受賞しました。
* 撮影賞: 『奇跡の海』とジム・ジャームッシュ監督のモノクロ西部劇『デッドマン』という、全く異なる世界観の作品で卓越した映像美を見せたロビー・ミューラーが受賞。その幅広い才能が認められた形です。

国際的な視野も忘れてはいけません。外国語映画賞には、イラン映画であるアッバス・キアロスタミ監督の『白い風船』が選ばれ、その普遍的な物語性が評価されました。また、真実を追求する力強い作品を表彰するドキュメンタリー賞は、『モハメド・アリかけがえのない日々』に贈られました。

映画界の新たな才能を奨励する新人監督賞は、レストランを舞台にした人間ドラマ『シェフとギャルソン、リストランテの夜』で共同でメガホンを取ったスタンリー・トゥッチとキャンベル・スコットが受賞し、今後の活躍を期待されました。

第62回ニューヨーク映画批評家協会賞は、『ファーゴ』の作品賞受賞を筆頭に、『奇跡の海』が監督賞、主演女優賞、撮影賞と複数の部門を制するなど、1996年の映画シーンを彩った優れた作品と才能に光を当てる結果となりました。これらの受賞は、その後のアカデミー賞などの他の映画賞の行方にも少なからず影響を与えるものとなりました。

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