第62回都市対抗野球大会

1991年7月21日から8月1日までの期間、東京ドームを舞台に第62回都市対抗野球大会が開催されました。この年の大会は、顔ぶれという点では大きな変化がなく、前回大会やそれ以前にも出場経験のある常連チームが多くを占めていました。初出場チームはなく、最もブランクがあった防府市・協和発酵でも16年ぶりの本大会進出でした。

大会期間中には、珍しい休養日も設けられました。7月23日にはプロ野球のオールスターゲーム第1戦が行われるため、都市対抗は試合を行いませんでした。東京ドームが会場となって以降、大会期間中に試合がなかった日は、この第62回大会のみという特異なケースでした。また、前年の優勝チームである浜松市・ヤマハが、大会の開幕戦で敗れる波乱も起こっています。川崎市・日本鋼管福山は、企業統合による名称変更後、NKKとして初めて本大会に出場しました。

今大会で最も注目を集めたのは、川崎市・東芝の丹波健二内野手です。彼は驚異的な打棒を振るい、出場した全試合でホームランを放ちました。具体的には、1回戦で1本、2回戦で2本、準々決勝で1本、準決勝で3本、そして決勝でも2本を記録。これにより、史上初となる5試合連続ホームランと、同じく史上初となる1大会9本塁打という二つの大会新記録を樹立しました。丹波選手の活躍はチームを牽引し、東芝の3年ぶり4度目の優勝に大きく貢献。その圧倒的なパフォーマンスが評価され、最高殊勲選手に贈られる橋戸賞に輝いたほか、ホームランに関する各種新記録を讃える特別賞、そして首位打者賞も獲得しました。

この大会は、丹波選手の個人記録にとどまらず、ホームランに関する多くの記録が生まれたことでも記憶されています。横須賀市・日産自動車は1回戦の名古屋市・NTT東海戦で、チーム1試合最多ホームラン数および1イニング最多ホームラン数の新記録を樹立しました。優勝した東芝も、チームとして1大会最多となる17本のホームランを放ち、これもまた史上初の記録でした。

決勝戦は8月1日に行われ、川崎市・東芝と長崎市・三菱重工長崎が対戦しました。試合は点の取り合いとなりましたが、東芝が12対6で三菱重工長崎を下し、優勝旗である黒獅子旗を手にしました。この試合でも、前述の通り丹波選手が2本のホームランを放つなど、両チームから計6本のホームランが飛び交う空中戦となりました。

大会終了後には、多くの選手やチームが表彰されました。橋戸賞の丹波健二選手（東芝）に加え、久慈賞には小島啓民左翼手（三菱重工長崎）、小野賞はチームとして健闘した長崎市・三菱重工長崎が受賞しました。若獅子賞には、優勝チームから杉山賢人投手（東芝）、そして住友金属から宮内洋内野手・指名打者が選ばれています。打撃面では、丹波選手が23打数16安打で打率.696を記録し、首位打者賞も獲得しました。大会優秀選手には、両チームから多くの選手が名を連ねています。

また、この第62回大会は、テレビ中継の面でも一つの区切りとなりました。この年を最後に、決勝戦の地上波（NHK総合）での生中継が終了し、翌年以降は衛星放送（NHK-BS1）での放送に切り替えられることになったのです。これは、都市対抗野球のテレビ中継の歴史において、大きな転換点となりました。

応援団コンクールでは、東芝が最優秀賞を獲得し、日立製作所が優秀賞、松下電器が敢闘賞、三菱重工長崎が特別賞を受賞しました。グラウンドでの熱戦とともに、スタンドでも熱い応援が繰り広げられた大会でした。

このように、第62回都市対抗野球大会は、丹波健二選手の驚異的な個人記録と、ホームランに関する多くの新記録が生まれた歴史的な大会であり、同時にテレビ中継のあり方にも変化が見られた節目の大会となりました。

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