第68回ニューヨーク映画批評家協会賞

ニューヨーク映画批評家協会賞は、毎年その年の優れた映画作品に対して贈られる権威ある賞です。第68回となる授賞式は、2002年 12月16日に執り行われ、前年である2002年に公開された数々の作品の中から、特に傑出していると評価された映画や映画人が表彰されました。

この年の授賞式では、トッド・ヘインズ監督の作品『エデンより彼方に』が主要部門を席巻し、大きな注目を集めました。同作品は、最も栄誉ある作品賞に選出されたほか、監督を務めたトッド・ヘインズが監督賞を受賞。さらに、『エデンより彼方に』に出演したデニス・クエイドが助演男優賞、パトリシア・クラークソンが助演女優賞を受賞するなど、演技部門でも高い評価を得ました。加えて、同作品の美しい映像世界を作り上げたエドワード・ラックマンが撮影賞を受賞し、『エデンより彼方に』は合計で5部門を制覇する快挙を達成しました。

他の主要部門においても、実力派の俳優たちが輝きを見せました。主演男優賞は、マーティン・スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』で印象的な演技を見せたダニエル・デイ＝ルイスが受賞しました。一方、主演女優賞は、エイドリアン・ライン監督の『運命の女』で複雑な女性像を演じたダイアン・レインに贈られました。

脚本賞には、独創的な語り口で観客を魅了したスパイク・ジョーンズ監督の『アダプテーション』を手掛けた、チャーリー・カウフマンとドナルド・カウフマンの兄弟が選ばれました。

主要な部門以外でも、多様な作品が評価されました。

第一回作品賞は、ディラン・キッド監督の映画『Roger Dodger』が受賞し、新たな才能の登場を印象付けました。
外国語映画賞には、アルフォンソ・キュアロン監督によるメキシコとアメリカ合衆国の合作映画『天国の口、終りの楽園。』が選ばれ、国境を越えた映画芸術の素晴らしさを称えました。
ノン・フィクション映画賞は、『Standing in the Shadows of Motown』が受賞し、ドキュメンタリー分野での優れた成果が認められました。
アニメ映画賞には、日本を代表する宮崎駿監督の作品『千と千尋の神隠し』が選出され、アニメーション映画の分野でも高い評価を得ました。

さらに、特別賞として、フリッツ・ラング監督によるサイレント映画の古典『メトロポリス』の修復作業が称えられました。これは、過去の映画遺産を保存し、未来に伝えることの重要性を示すものと言えるでしょう。

第68回ニューヨーク映画批評家協会賞は、作品賞を受賞した『エデンより彼方に』の圧倒的な強さが際立つ一方で、演技、脚本、撮影、そして外国語映画やアニメーション、ドキュメンタリーといった多様なジャンルの作品にも光を当て、2002年の映画界における芸術的な豊かさを反映する結果となりました。

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