第8回先進国首脳会議

ヴェルサイユ・サミット（第8回先進国首脳会議）

第8回先進国首脳会議は、1982年6月4日から6日までの3日間、フランスのヴェルサイユで開催されました。「ヴェルサイユ・サミット」の通称で知られるこの会議は、当時の主要先進7カ国（G7）および欧州共同体（EC）の首脳が集結し、世界が直面する政治・経済の課題について協議を行いました。

この会議が開催された期間は、イギリスとアルゼンチンとの間でフォークランド（マルビナス）諸島を巡る紛争が激化していた最中であり、国際情勢が緊迫する中で開かれたことでも注目されます。

出席首脳・代表

ヴェルサイユ・サミットには、以下の各国首脳および欧州共同体代表が出席しました。

• - フランソワ・ミッテラン（フランス共和国大統領、議長）
• - ロナルド・レーガン（アメリカ合衆国大統領）
• - マーガレット・サッチャー（イギリス首相）
• - ヘルムート・シュミット（西ドイツ首相）
• - 鈴木善幸（日本国内閣総理大臣）
• - ジョバンニ・スパドリーニ（イタリア首相）
• - ピエール・トルドー（カナダ首相）
• - ガストン・トルン（欧州委員会委員長）
• - ウィルフレッド・マルテンス（ベルギー首相）

主要な議題と背景

このサミットにおいて最も重要な議題とされたのは、1981年12月に戒厳令が発動されたポーランドの状況への対応でした。この問題に関して、米国と欧州諸国の間では、ポーランドに対する制裁措置などを巡って意見の隔たりがありました。

両者の対立の背景には、米国の中央情報局（CIA）がポーランド国内の反体制運動を陰で支援していたとの見方があったとされています。このような状況下で、日本の鈴木善幸首相は、米欧間の溝を埋め、会議として統一された共同声明を採択に導くため、精力的に両者間の仲介に尽力しました。

日本のこのような積極的な役割の背景には、サミット開催に先立ち、衆議院議員の麻生太郎氏がポーランドを訪問し、チーレク外務大臣をはじめとする要人と率直な意見交換を行った上で、パリで鈴木首相に対して、サミットにおける日本の取るべき役割について助言を与えていたことがあったと伝えられています。

会議のその他の内容

ポーランド問題のほか、会議では多岐にわたる議題が議論されました。

• - 科学技術と経済再活性化: フランスのミッテラン大統領の提案により、経済の活性化に不可欠な科学技術の振興と、そのための国際協力の促進が初めて主要な議題として取り上げられました。この分野における協力強化のため、具体的な作業部会を設置することが合意されました。

• - 通貨の安定: 国際通貨の安定性を図るため、各国の通貨当局間での連携をより一層強化することが約束されました。

• - 自由貿易体制: 世界貿易機関（WTO）の前身であるガット（GATT）体制のもと、自由貿易の枠組みを維持・強化していくことの重要性について認識が一致しました。また、同年中に開催が予定されていたガット閣僚会議に対し、積極的な姿勢で臨むことも確認されました。

• - 対ソ・東欧金融関係: ソビエト連邦や東欧諸国との金融取引に関しては、慎重に進めるべきであるとの共通認識が持たれました。

• - 地域情勢: 中東地域のレバノン問題に関するアピールが発表されました。また、会議の最中にあったイギリスとアルゼンチンのフォークランド紛争についても、首脳間で意見交換が行われました。

ヴェルサイユ・サミットは、国際的な政治的緊張と経済的な課題が混在する中で開催され、特にポーランド問題を巡る米欧の対立とその調整、そして経済分野における科学技術の役割への注目の高まりなど、当時の世界の状況を反映した会議となりました。

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