第9回全国中等学校優勝野球大会

第9回全国中等学校優勝野球大会

1923年（大正12年）の夏、日本の高校野球史に名を刻む出来事が兵庫県鳴尾村（現在の西宮市）の鳴尾球場を舞台に繰り広げられました。8月16日から20日までの短い期間で行われたのが、第9回全国中等学校優勝野球大会です。

地方大会の再編と拡大

この大会では、地域予選の仕組みに大きな変化が見られました。これまでの東京府と神奈川県を対象としていた京浜大会が廃止され、新たに東京府単独の東京大会と、神奈川県および静岡県が参加する神静大会が編成されました。さらに、この年から台湾からの参加が始まり、地方大会は前回大会より2つ増えて合計19大会となりました。これは、全国各地への高校野球の広がりを示す出来事と言えるでしょう。

歴史的な出来事と新たな試み

第9回大会は、単なる試合だけでなく、その後の全国大会に影響を与える様々な出来事や新たな試みが導入された大会としても記憶されています。

まず、大会の開幕式では、始球式で使用するボールを飛行機から投下するという、祝賀飛行が初めて実施されました。これは当時としては画期的な演出でした。

出場校の中には、注目を集めたチームがありました。朝鮮から参加した徽文高普は、選手全員が朝鮮人というチームでした。これは、大会の歴史において最初で最後となる珍しいケースでした。

そして、この大会のハイライトであり、同時にその後の会場に影響を与える出来事となったのが、準決勝で起こった観客殺到です。兵庫代表の甲陽中と京津代表の立命館中が対戦した際、鳴尾球場のスタンドに収容しきれないほどの観衆がグラウンドに流れ込み、試合が一時中断するという事態が発生しました。この一件は、当時の野球場の収容能力の限界を露呈し、より大規模で近代的な野球場が必要であることを強く認識させました。結果として、この経験が翌年（1924年8月1日）に開場する阪神甲子園球場（当時の名称は甲子園大運動場）の建設を急がせる大きな要因の一つとなったと言われています。

鳴尾球場の終焉と優勝旗の制度変更

期間短縮のために第3回大会から使用されてきた鳴尾球場でしたが、前述のような観客収容能力の問題などもあり、この第9回大会をもって全国中等学校優勝野球大会の会場としての役目を終えることとなりました。翌年からは、新設された甲子園球場へと舞台が移されます。

また、この大会から、優勝校には真紅の大優勝旗のレプリカが贈呈される制度が始まりました。これは後の大会にも引き継がれる重要な制度変更であり、過去の優勝校にも遡ってレプリカが贈られました。

試合結果（一部）

大会では、全国各地の代表校が熱戦を繰り広げました。以下に、提供情報に基づく一部試合結果を示します。

1回戦
新潟商 2 - 1 明星商
甲陽中 8 - 2 宇都宮商
早稲田実 5 - 1 横浜商
2回戦
立命館中 23 - 4 台北一中
松江中 9 - 3 仙台一中
広陵中 12 - 7 新潟商
和歌山中 9 - 2 金沢商
甲陽中 3 - 2 松山商
徽文高普 9 - 4 大連商
早稲田実 6 - 4 愛知一中（延長11回）
函館商 6 - 5 佐賀中
準々決勝
甲陽中 6 - 1 早稲田実
和歌山中 8 - 2 広陵中
松江中 5 - 4 函館商
立命館中 7 - 5 徽文高普
準決勝
甲陽中 13 - 5 立命館中
和歌山中 7 - 3 松江中

※決勝戦に関する情報は提供されていません。

大会本塁打

この大会で記録された本塁打のうち、提供情報には以下の3本があります。

第1号：藤本定義（松山商）
第2号：岡田貴一（甲陽中）
第3号：渡辺勝次（佐賀中）

その他の主な出場選手

後の野球界で名を馳せる選手たちも出場しています。提供情報に挙げられているのは以下の選手です。

加藤喜作（広陵中）
森茂雄（松山商）

第9回大会は、鳴尾球場という一つの時代に幕を下ろし、甲子園へと舞台を移す直前の、まさに過渡期にあたる大会でした。多くの新しい試みや、その後の野球史に影響を与える出来事があった、記憶に残る大会と言えるでしょう。

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