第9地区

『第9地区』の概要

『第9地区』（原題: District 9）は、2009年8月に公開されたSF映画であり、日本では2010年4月に劇場公開されました。本作は、地球に難民としてやってきたエイリアンと、その彼らを抑圧する人類との対立を描いた作品で、アフリカのアパルトヘイト政策からの影響が色濃く反映されています。物語は、エイリアンの研究物質に誤って触れた男がエイリアン管理組織から追われる様子を中心に構成され、アクション要素とドキュメンタリータッチが融合しています。アカデミー賞では作品賞をはじめ、4部門にノミネートされました。

ストーリーの展開

物語は1982年、南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に突如現れた巨大な宇宙船から始まります。この宇宙船では応答がなく、乗員が降りることもなかったため、人類は調査を行うことを決定します。調査隊が宇宙船に入ると、支配層の姿はなく、難民となったエイリアンの群れを発見します。その後、エイリアンたちは隔離地区「第9地区」に移され、南アフリカの超国家機関MNUによって管理されることとなります。

エイリアンと人類の間には文化の違いや見た目の違いから小さな衝突が常に発生し、人類のエイリアンへの差別も強まっていきます。人々は彼らを「エビ」と呼ぶようになり、侮蔑の意味が附与されていきます。28年後、エイリアンの数が増加したため、彼らを新たな隔離区域「第10地区」へ移住させる計画が立てられ、MNUの職員であるヴィカス・ファン・デ・メルヴェがその立ち退き交渉を担当することになります。

第9地区訪問中、ヴィカスはエイリアンのクリストファー・ジョンソンの住居で見つけた液体を誤って浴びてしまい、身体がエイリアンに変わり始めます。MNUから捕まった彼は、逃げ出して再び第9地区に戻り、クリストファーに接触します。クリストファーはこの液体が宇宙船の燃料であることを明かし、液体を取り戻すことでヴィカスを元の身体に戻す手助けをすると約束します。

キャラクターと設定

主要登場人物として、MNUのクーバス大佐や、エイリアンのクリストファー・ジョンソン、ヴィカスの妻タニアなどがいます。特にヴィカスはMNUの義子であり、エイリアンへの立ち退き交渉の現場責任者として描かれています。物語が進行する中、ヴィカスはエイリアンの姿に変容し、苦悩しながらもクリストファーとの絆を深め、彼を助ける冒険に挑みます。

一方、MNUはエイリアンの管理を任された超国家機関としての役割を果たしますが、その裏側ではエイリアンの生体実験や権利を無視した行動が見受けられます。エイリアンは甲殻類に似た外見を持つ異星人で、「エビ」と侮蔑的に呼ばれています。彼らはゴムや肉を好み、高い繁殖能力を持っているため、定住後に急速に増加しました。

製作と評価

『第9地区』は、ニール・ブロムカンプ監督の長編デビュー作であり、彼の過去の短編映画を元にしたものです。製作には、様々なVFX会社が関与し、限られた予算の中で高いクオリティを実現しました。本作は興行的にも成功を収め、批評家からも高い評価を得ました。特に批評サイトRotten Tomatoesでは90%の支持率を記録し、アカデミー賞にもノミネートされています。

続編の可能性

2013年には続編のアイデアが語られ、2021年には『District 10』のタイトルで続編の脚本が執筆されていることが発表されました。エイリアンと人間の対立を描きながらも、深い人間ドラマを展開する本作は、ただのSF映画としてだけでなく、社会的メッセージを含んだエンターテインメント作品として多くの観客に支持され続けています。

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