第90回日本陸上競技選手権大会

2006年（平成18年）に開催された第90回日本陸上競技選手権大会は、日本の陸上競技界におけるその年の国内チャンピオンを決定するとともに、同年秋にカタールのドーハで開催された第15回アジア競技大会へ派遣される日本代表選手を選考するための、非常に重要な位置づけを持つ競技会でした。

この大会は、2006年6月30日から7月2日までの3日間にわたり、兵庫県神戸市須磨区にある神戸市ユニバー記念競技場を会場として開催されました。ユニバー記念競技場は、関西地方を代表する陸上競技施設のひとつですが、意外にも日本陸上競技選手権大会の主要会場として使用されるのは、この第90回大会が初めてのことでした。また、兵庫県内で国内最高峰の陸上競技大会が開催されるのは、1957年（昭和32年）に行われた第41回大会以来、実に49年ぶりという長い空白期間を経てのことであり、地元の陸上競技関係者やファンにとっても、待望のイベントとなりました。

大会の主催は、日本の陸上競技界を統括し、年間を通じて様々な競技会を企画・運営している日本陸上競技連盟が担いました。長年にわたり培われた大会運営のノウハウに基づき、スムーズかつ公正な競技進行が行われました。

この第90回大会において特筆すべき変更点の一つに、女子の実施種目の拡充があります。具体的には、女子中長距離種目において、3000メートル障害（3000mSC）が新たに正式な競技種目として採用されました。これは、国際陸上競技連盟（当時のIAAF）が女子3000m障害を主要な国際大会で実施種目として導入する動きに合わせて国内競技会でも普及を図るものであり、日本の女子選手たちに新たな活躍の舞台と専門性を追求する機会を提供するものとなりました。

アジア競技大会の代表選考会を兼ねていたことから、各競技種目では日本一のタイトルと国際大会への出場権をかけて、国内トップクラスの選手たちが白熱した戦いを繰り広げました。経験豊富なベテラン選手から頭角を現し始めた若手選手まで、多くの選手が自己記録の更新や日本記録への挑戦を目指し、競技場は終始、緊張感と興奮に包まれました。特に代表選考のかかる種目では、わずかな差で明暗が分かれるドラマが数多く生まれました。

この大会で優秀な成績を収め、代表に選出された選手たちは、その後のドーハアジア競技大会で日本の陸上競技界を代表して世界の強豪と戦いました。また、この選手権での経験は、多くの選手にとって、翌年以降の世界選手権や、さらにその先の北京オリンピックなどを見据えた競技人生において、重要なステップアップの機会となりました。

大会の全容や各競技種目の詳細な結果については、大会を主催した日本陸上競技連盟の公式ウェブサイトやアーカイブ、および開催地の陸上競技協会などが管理する記録資料に掲載されています。特に、兵庫陸上競技協会は、当時の大会成績をまとめた一覧表を公開しており、興味のある方はこれらの資料を参照することで、大会の具体的な記録や順位を確認することができます。これらの資料は、当時の日本陸上界のレベルや選手たちの活躍を知る上で貴重な情報源となっています。

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