第91回都市対抗野球大会

2020年 11月22日から12日間にわたり、東京都文京区にある東京ドームを舞台に開催された社会人野球の祭典です。この年は、世界的な新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックという未曽有の事態に見舞われ、開催に至るまでには様々な困難がありました。

開催までの経緯

当初、本大会は東京オリンピックの開催時期を考慮し、11月下旬からの開催が予定されていました。それに先立つ予選は、3月末の奈良県を皮切りに各地で始まる計画が進められていました。しかし、COVID-19の感染が拡大し、スポーツイベントの開催自体が困難な状況となり、オリンピックの延期も決定されました。このような状況下で、他の社会人野球の主要大会である全日本クラブ野球選手権や社会人野球日本選手権大会が中止される中、日本野球連盟は都市対抗野球大会の開催に向けて粘り強い努力を続けました。そして、7月2日に大会開催が正式に決定され、7月4日から埼玉県、山梨県、滋賀県を皮切りに、感染防止策を講じながら各地で予選が開始されました。予選の一部では無観客試合も実施されましたが、概ね順調に進み、10月16日には本大会に出場する32チーム全てが出揃いました。

出場チームに関する話題

この年の予選を勝ち抜いたチームの中には、いくつかの注目すべき顔ぶれがありました。特に、創部からわずか2年目、予選への参加も初めてだった千葉県富里市のハナマウイが、堂々の初出場を果たしました。また、過去に優勝経験を持つ強豪チームが久しぶりに本大会へ帰ってきました。具体的には、岡山県倉敷市の三菱自動車倉敷オーシャンズが16年ぶり、愛知県名古屋市のジェイプロジェクトが8年ぶり、秋田県にかほ市のTDKが7年ぶり、そして神奈川県横浜市のENEOSが5年ぶりの出場です。ENEOSは、この出場によって史上3チーム目となる記念すべき通算50回目の本大会出場を達成しました。さらに、大会の初戦で東邦ガスに勝利したことにより、社会人野球界で史上初となる通算100勝という金字塔を打ち立てています。

一方、2021年度から社会人野球チームを2つに再編・集約することを発表していた三菱重工業からは、4チーム（三菱パワー、名古屋、神戸・高砂、広島）が予選に参加しましたが、本大会への出場権を得たのは広島市の三菱重工広島のみでした。

会場利用とプロ野球日本シリーズ

本大会の会場である東京ドームは、プロ野球・読売ジャイアンツ（巨人）の本拠地です。2020年の巨人はセントラル・リーグで優勝し、日本選手権シリーズ（日本シリーズ）に進出しました。本来であれば、巨人のホームゲームは東京ドームで行われることになっています。しかし、この年はCOVID-19の影響により、日本シリーズの開催期間が本大会の期間（11月21日～29日）と重複してしまいました。日本野球連盟は、当初の予定通り東京ドームで都市対抗野球大会を開催することを優先しました。そのため、日本シリーズの巨人のホームゲームについては、特例措置として社会人野球日本選手権大会の会場としても使用されることのある京セラドーム大阪が代替会場として用いられ、シリーズの第1戦と第2戦がそこで実施されることになりました。

また、この年は社会人野球日本選手権大会の開催時期が夏季に前倒しされる予定でしたが（結果的に中止）、これに伴う暫定的な措置として、本大会の優勝チームに対する翌年度の社会人野球日本選手権大会への推薦出場権は与えられませんでした。この措置は、東京五輪延期に伴う暫定対応が継続された2021年（第46回社会人野球日本選手権大会）においても引き継がれています。

新型コロナウイルス感染症対策

感染拡大防止のため、大会運営には様々な対策が講じられました。観客の入場については、1試合あたり1万人を上限とする制限が設けられ、全ての座席が指定席となりました。また、外野席と3階席は使用できませんでした。チケット販売も球場での当日販売はなく、インターネット上での事前販売のみで行われました。応援についても制限が課され、一般的な応援活動は禁止されました。これに伴い、例年開催されていた応援団コンクールも中止となりました。

延長戦の規定にも特別な変更がありました。この年に限り、準決勝までは試合時間に制限を設けない形式となりました。決勝戦のみは、試合開始から4時間以上が経過した場合に限り、「10回以後、1アウト満塁の状態から、かつ10回は打順選択制」という条件付きでタイブレーク制度が導入されました。

決勝戦

大会の頂点を決める決勝戦は、過去に優勝経験を持つチーム同士の対決となりました。埼玉県狭山市を代表するHondaと、東京都を代表するNTT東日本が激突しました。緊迫した試合は、HondaがNTT東日本を4対1で破り、見事な勝利を収めました。Hondaにとっては、11年ぶりとなる3回目の都市対抗野球大会優勝旗獲得となりました。

この大会は、パンデミックという困難な状況下でありながらも、関係者の尽力によって無事に開催され、社会人野球に携わる多くの人々に希望を与えた大会として記憶されることとなりました。

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