筑波研究学園都市建設法

筑波研究学園都市建設法（つくばけんきゅうがくえんとしけんせつほう）は、1970年（昭和45年）5月19日に公布され、同日施行された日本の法律です。法令番号は昭和45年法律第73号と定められています。この法律は、具体的に茨城県のつくば地区に「筑波研究学園都市」を建設するための法的な基盤を確立し、その計画策定と実現を推進することを目的として制定されました。

本法の最も重要な目的の一つは、日本の首都圏、特に既成市街地における人口や様々な機能の過度な集中状態を緩和することにあります。東京一極集中がもたらす様々な課題に対し、中核的な機関の一部を地方に移転させることで、首都圏全体の均衡ある発展を目指したのです。同時に、国内の試験研究および教育水準を一層高めるため、最先端の研究機関や大学を集中配置し、それらが十分に機能できる環境を整備することも、この法律の主要な狙いでした。

法律では、建設される都市が単なる研究施設の集まりではなく、「試験研究および教育を行なうのにふさわしい研究学園都市」であるとともに、「均衡のとれた田園都市」として整備されることを目指しています。これは、高度な学術機能を持つと同時に、豊かな自然環境と調和し、そこで暮らす人々が快適に生活できる都市空間を創出するという、多面的な目標を示しています。

この目標を達成するため、法律は具体的な手法として、首都圏の既成市街地にある試験研究機関や大学、その他目的に合致する機関の施設を新たな都市に移転または新設することを定めています。さらに、これらの機関が集まる地域に、研究活動や日常生活を支えるための公共施設、公益施設、そしてまとまった規模の住宅施設を一体的に整備することを計画の柱としています。これにより、職住接近が可能で、研究者やその家族が必要とするあらゆる機能が都市内に完結するような構造を目指しました。

本法における「筑波研究学園都市」の定義も明確にされています。それは、首都圏から移転または新設される研究機関や大学などの施設が存在し、それらをサポートする公共施設、公益施設、住宅施設が一体的に整備される地域であり、かつ、全体として均衡の取れた田園都市として整備されることを目的として建設される都市を指します。この定義は、都市の性格と整備の方向性を明確に示しており、その後の都市開発の指針となりました。

筑波研究学園都市建設法の制定は、日本の国土計画と科学技術政策の両面において重要な意義を持つものです。この法律に基づき、長期にわたる大規模な国家プロジェクトとして都市建設が進められた結果、現在の筑波研究学園都市は、国際的な研究拠点として発展し、多くの研究者や学生が集まる活気ある都市となっています。法律は、単なる施設の物理的な移転・集積を超え、研究と教育、そして人々の豊かな生活が調和する新しい都市モデルの実現を後押ししたと言えるでしょう。

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