箔押し

箔押しとは：伝統と技術が織りなす表面加工

箔押しは、金属箔を高温と高圧で素材に転写する、伝統的な表面加工技術です。特に、金や銀の箔を用いることで、印刷物や皮革製品に独特の光沢と高級感を付与します。現代では、工業製品への大量生産を可能にするホットスタンピングも普及し、箔押しとほぼ同義として扱われることもあります。

箔押しの加工

伝統的な箔押しでは、薄く伸ばした金属箔や顔料を使い、洋書の装幀、帽子、桐製品、皮革製品など、様々な素材に加工を施してきました。印刷技術としての箔押しは、接着剤を蒸着させた金属箔を、金属製の版を用いて熱転写する技術です。凸版を使用し、活版印刷の要領で熱転写を行います。

接着剤の種類を変えることで、紙、皮革、プラスチックなど、多様な素材に対応できます。箔押し加工の最大の魅力は、他の印刷方法では再現できない金属鏡面のような光沢です。特に金や銀の光沢は、豪華で強い存在感を放ちます。また、版の形状を工夫することで、凹凸のある印刷も可能になり、より印象的な仕上がりを実現できます。箔押しは、製本、皮革製品、ビニール製品、文具など、幅広い分野で活用されています。

特殊な箔押し技術としては、ホログラム箔押し、転写箔押し、ラバー版押し、盛り上げエンボス加工、ウェルダー併用箔押しなどがあります。

箔押しの歴史

日本の箔押し

日本の箔押し技術は、漆器や蒔絵に金箔を貼る「金貼り」と呼ばれる技術が起源とされています。中世には既に、漆器や上製本に本物の金箔を用いた箔押しが行われていました。

西洋のギルディング

ヨーロッパでは、13世紀中頃から彩飾写本が盛んに制作されました。彩飾画家は、絵の具に金粉を混ぜたり、金箔を貼り付けたりして彩色を加えていました（ギルディング）。金箔を貼り付けるための下地には、水銀、白粉、木の幹、砂糖、にかわ、卵などの混合物が用いられました。

ホットスタンピング

プラスチック製品（工業製品、家電製品、化粧品容器など）への箔押しは、一般的にホットスタンプと呼ばれ、伝統的な箔押しとは区別されることがあります。ホットスタンプは、ホットスタンプ箔を材料として、熱プレスマシンやローラー式の転写機を使用して加工されます。1970年代から、プラスチック射出成型品への加飾技法として広く使用されてきました。

関連する加工法

デボス加工（空押し）

箔押し機を用いて箔を使用せずに加圧すると、表面が凹状になります。この加工をデボス加工（空押し）といいます。

エンボス加工（浮き出し）

箔押し機を用いて凹凸の版で挟み込むと、表面が凸状になります。この加工をエンボス加工（浮き出し）といいます。一般には、浮き出しの加工も空押しと称されることがありますが、凹凸を明確にするために専門的には区別されています。表面が凸になる反面、裏面は凹むのが特徴です。

筋入れ

直線や罫線を入れた金属版をセットして空押しする加工を筋入れといいます。

関連項目

* 金付け

もう一度検索