米坂線雪崩直撃事故

米坂線雪崩直撃事故：未曾有の惨劇と安全対策の課題

1940年（昭和15年）3月5日、山形県西置賜郡小国町（当時、小国本村）で発生した米坂線の列車事故は、日本の鉄道史に暗い影を落とした悲劇として記憶されています。この事故は、突如発生した雪崩が荒川に架かる第四荒川橋梁を直撃、橋梁の崩壊を引き起こしたことから始まりました。

当時、小国駅と越後金丸駅間を運行していた下り103混合列車は、米沢駅から坂町駅へ向かう途中にありました。8620形蒸気機関車48639号機が牽引する客車3両、貨車2両の編成でした。午前8時45分頃、列車は雪崩で崩壊した橋梁に差し掛かりました。衝撃的なことに、最後尾の客車1両を残し、機関車と他の車両は荒川へと転落。絶望的な状況が目の前に広がったのです。

奇跡的に転落を免れた最後尾車両の乗客が、付近の踏切監視小屋に駆け込み、事故を知らせました。玉川口駅長と除雪人夫らが現場に急行し、救助活動を開始しますが、さらに悲劇が待ち受けていました。転落した貨車に積載されていたと推測される硫黄合剤が、3度にわたって爆発。炎が客車に燃え移り、被害は拡大の一途を辿ります。救助活動にあたり、遺体の損壊が激しく、性別すら判別できないものもあったと記録されています。

客車には130名もの乗客が乗車していました。この未曾有の事故により、15名もの尊い命が失われ、30名が負傷しました。この惨劇は、当時の雪崩対策の脆弱性を改めて浮き彫りにし、鉄道における安全対策の重要性を痛烈に問いかけるものとなりました。

雪崩の発生時期については、諸説あります。一説には、列車の後部2～3両目がトンネルから出たまさにその瞬間、雪崩が襲ったとされています。そのため、最後尾車両はトンネル内で逆立ち状態になり、連結器が破断した結果、転落を免れたという見解もあります。この偶然の出来事が、生存者数に影響を与えた可能性も否定できません。

事故現場には、殉難碑が建てられ、JR東日本のOBの方々を中心とした関係者によって、現在も大切に整備されています。この碑は、犠牲者への鎮魂の思いとともに、二度とこのような悲劇を繰り返してはならないという、未来への誓いを刻み続けているのです。

この米坂線雪崩事故は、単なる過去の事故として片付けるのではなく、現代の鉄道安全対策における重要な教訓として、後世に伝えていくべきでしょう。自然災害に対する備え、そして人命を第一に考える姿勢。これらの要素が、未来の安全を担保するために不可欠なのです。関係資料として、『雪氷』誌に掲載された丸山久一氏の記事や、佐々木冨泰氏と網谷りょういち氏による『事故の鉄道史』『続・事故の鉄道史』などが、この事故の詳細な状況を知る上で貴重な資料となっています。これらの記録から、改めて事故の重大さと、そこから得られる教訓を学ぶ必要があるでしょう。

もう一度検索