米沢彦八

米沢 彦八

米沢彦八（よねざわ ひこはち）は、落語界で広く知られる名跡ですが、現在では空き名跡となっています。これまでに4～5名の落語家がこの名を名乗ったとされていますが、詳細はあまり知られていません。表記は時に「米澤彦八」ともされます。

初代

初代米沢彦八は、江戸時代中期、特に元禄から正徳の時期に上方で活動した落語家です。彼の本名は明らかではありませんが、豊笑堂という号で知られています。一部の資料によれば、彼は1714年に名古屋で亡くなったとされています。彦八は、特に人々の注目を集める技を持つ落語家であり、辻咄から始まりました。生玉神社の境内では大道芸人たちがその腕を競い合い、彼の物真似芸も多くの観客を惹きつけました。彦八の「当世仕方物真似」という看板は、彼の演技に対する人気を示すものでした。

彼の演じた内容は、軽口本集『軽口御前男』『軽口大矢数』『祇園景清』などにまとめられており、特に独自の落ちを重視した新しいスタイルが特徴的です。その影響で彼は、「上方落語の始祖」として認識され多くの後進たちに影響を与えました。演じる際には、立烏帽子や大黒頭巾、そして湯呑茶碗を使い、大名に扮するのが得意だったとされ、その様子を描いた挿絵も残っています。彼の芸は後の時代の俄の芸能などに繋がる重要な要素を豊富に含んでいます。

また、この時期に生玉で作られた操り人形「生玉人形」は、彼の姿をモデルとしたもので、昭和初期まで人気を集めていました。

二代目

続いて二代目米沢彦八も、18世紀の享保から明和時代に活躍しましたが、本名や初代との関係は不明です。「風之」という号で知られ、彼は三味線や小道具を用いた辻話を披露し、鳴り物を使用した初めの人物であるとされています。彼は京都の名物男として親しまれ、軽口本集『軽口福おとし』『軽口耳過宝』を残しました。1768年頃には彼もまた亡くなったと考えられています。彼の弟子たちには徒弟制度があり、3代目や4代目の彦八を名乗る者もいた記録がありますが、具体的な詳細は謎に包まれています。

その後の影響

明治時代には、天満の天神橋周辺に多くの寄席が存在し、「天満八軒」と呼ばれるほどの繁盛を誇っていました。しかし昭和に入ると、戦後の混乱により寄席は次第に減少し、上方落語は衰退していきました。それでも、3代目桂米朝や6代目笑福亭松鶴などが復興運動を行い、1957年には上方落語協会が設立されました。

1990年、上方落語協会は米沢彦八の業績を称えるために、「彦八の碑」を生国魂神社に建立しました。このことは彦八の芸術的な遺産を称える意味を持ち、地域の文化として根付くことに寄与しました。毎年行われる「彦八まつり」では、上方落語の伝統を広めるための活動が続けられています。

碑には「遠く宝永正徳の砌に...」という歌い上げが刻まれており、彦八の落語が如何に人々に影響を与え、今日の上方落語の隆盛に貢献してきたのかを物語っています。同碑は、彦八の伝説を受け継ぎ、今後ますますの芸道精進を誓う象徴的な存在となっています。

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