米澤菊二

米澤菊二：激動の時代を生きた外交官

米澤菊二（よねざわ きくじ）は、1894年（明治27年）に石川県能美郡（現在の能美市）で生まれ、1983年（昭和58年）に89歳で亡くなった日本の外交官です。東京帝国大学法科大学政治科を卒業後、農商務省に入省し、その後外務省に転じました。

外交官としてのキャリア

米澤は外務省で、イギリス大使館勤務や満州国大使館一等書記官、カルカッタ総領事などを歴任し、1939年（昭和14年）には駐ポルトガル公使に就任しました。第二次世界大戦の開戦直前の時期に、ヨーロッパで重要な役割を担っていました。1941年（昭和16年）に公使を退任した後は、日本交易協会の専務理事や東亜研究所の理事を務めるなど、外交の現場から退いた後も活躍を続けました。

クーデンホーフ＝カレルギー伯亡命支援

米澤の外交官としてのキャリアの中で特筆すべきは、第二次世界大戦中に、パン・ヨーロッパ運動の指導者であったリヒャルト・クーデンホーフ＝カレルギー伯の亡命を支援したことです。ナチス・ドイツを批判し、ユダヤ差別にも反対していたクーデンホーフ＝カレルギー伯は、ナチスの迫害から逃れるためヨーロッパを脱出しようとしていました。

米澤は、当時駐ポルトガル公使としてリスボンに滞在しており、クーデンホーフ＝カレルギー伯の亡命を様々な形で支援しました。この支援がなければ、クーデンホーフ＝カレルギー伯の亡命は成功しなかったかもしれません。クーデンホーフ＝カレルギー伯は、米澤に感謝の意を込めて著書『Totaler Staat – Totaler Mensch』（1937年）の英語版『The Totalitarian State against Man』を贈呈しました。

この贈呈本は、戦後、鳩山一郎によって翻訳され、日本の政治にも影響を与えました。鳩山一郎の友愛思想や、孫である鳩山由紀夫・鳩山邦夫による民主党の結成、由紀夫による東アジア共同体提唱につながったとされています。米澤の行動は、単なる外交官の枠を超えて、歴史の大きな流れに影響を与えたといえるでしょう。

その他の活動と著書

米澤は、外交官としての活動の傍ら、東亜研究所でインドに関する研究にも携わっており、著書『印度國民會議派ノ内部情勢ニ就テ』などを発表しています。また、『大東亜戦争と印度の地位』や『日葡交通の起原』など、講演記録や編著も残しています。これらの著作から、米澤が当時の国際情勢や日本の外交政策に対して深い関心を持っていたことが窺えます。

米澤菊二の遺産

米澤菊二は、激動の時代を生きた外交官であり、その行動は、当時の国際政治だけでなく、戦後の日本の政治にも大きな影響を与えました。特に、クーデンホーフ＝カレルギー伯の亡命支援は、歴史に残るエピソードとして語り継がれています。米澤の生涯は、外交官としての責任感と人間としての勇気を体現しており、現代を生きる私たちにとっても、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

もう一度検索