精神的依存

精神的依存（せいしんてきいぞん / せいしんてきいそん）

精神的依存は、特定の薬物を使用したり、ある種の行動を継続したりすることを突然やめた際に、感情面や意欲に関する不快な状態が生じる現象です。これは依存の一形態とされており、具体的には、強い不安感、気分の落ち込み、興味の喪失、喜びを感じられないといった精神的な苦痛や渇望を伴います。

嗜癖（アディクション）との関係

精神的依存は、しばしば嗜癖（アディクション）の一つの要素として捉えられます。かつては、精神障害の診断基準などにおいても、依存と嗜癖が関連付けられて記述されてきました。しかし、依存を引き起こす薬物や行動が、必ずしもすべての人に嗜癖を生じさせるわけではなく、またその逆のケースも存在するため、これらは完全に同一視できるものではありません。

精神的依存のメカニズム

精神的依存と嗜癖は、学習理論の一つであるオペラント条件づけを通して生じると考えられています。しかし、その強化のタイプには違いが見られます。

嗜癖: 主に正の強化に基づくとされます。これは、薬物使用や特定の行動によって得られる快感や報酬（ポジティブな結果）を繰り返し求めることで、その行動が強化され、止められなくなる強迫的な行動につながります。
精神的依存: 主に負の強化に基づくとされます。特定の薬物や行動への依存が形成されると、それを中断した際に生じる精神的な不快な離脱症状（ネガティブな結果）を避けるために、再び薬物を使用したり同じ行動をとったりしようとする強い衝動や渇望が生じます。この不快な状態からの解放や回避が、その行動を維持させる強化として機能します。

つまり、嗜癖が「快を得るため」に駆り立てられる側面が強いのに対し、精神的依存は「不快から逃れるため」に駆り立てられる側面が強いと言えます。

対象となる薬物や行動

精神的依存は、薬物だけでなく、様々な行動においても起こり得ます。持続的に、あるいは頻繁に特定の刺激にさらされることで形成されると考えられています。精神的な離脱症状を伴う可能性がある行動としては、過度な運動、制御できない買い物、性行為、ポルノグラフィーの視聴、砂糖や脂肪を多く含む特定の食物の摂取などが挙げられます。

克服に向けて

精神的依存を克服するためには、専門的な介入が有効とされることが多く、特に行動療法が広く用いられます。行動療法では、依存対象への渇望や不快な感情に対する対処法を学び、依存行動に代わる健康的な行動パターンを確立することを目指します。自身の精神的な状態や行動パターンを理解し、適切なサポートを得ることが回復への重要なステップとなります。

精神的依存は、個人の感情や動機に深く関わる複雑な状態であり、その理解と適切な対応が求められます。

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