糖業改良意見書

糖業改良意見書について

糖業改良意見書（とうぎょうかいりょういけんしょ）とは、台湾総督府の殖産局長であった新渡戸稲造が、1901年9月に提出した文書であり、甘蔗（さとうきび）の生産、製造、並びに市場面の改善に関する提案が記されています。これは、台湾において糖業を振興させるために策定されたものであり、その当時、台湾の糖業は多くの問題に直面していたことが背景にあります。

背景

1895年に日本が台湾の統治を開始した際、台湾総督府は甘蔗の栽培を推奨し、糖業の発展を図りました。特に、第4代総督の児玉源太郎と民政長官の後藤新平は、植民地政策の中心に産業振興を据え、その中でも糖業の奨励を重視しました。その結果、台湾製糖株式会社が設立され、新しい製糖技術の導入が試みられました。しかし、実際の産糖高は減少に転じ、多くの課題が浮上しました。この状況を改善するために、新渡戸稲造が台湾総督府に招聘され、糖業の根本的な見直しを行うことが求められたのです。

建議の内容

新渡戸は糖業の産糖高減少の原因を分析し、以下の幾つかの要因を挙げました：
1. 戦乱による資本の逃避
2. 土着の盗賊による蔗園の荒廃
3. 労働者の流出
4. 耕作面積の減少
5. 苛重な課税
6. 中間業者への利益分配や賃金の高騰

この要因を踏まえ、新渡戸は具体的な改善策を提案しました。まず甘蔗の生産面では、品種の改良を行い、特にジャワからの新しい品種を導入することや、栽培法の見直しを掲げました。また、水利の改善や新たな蔗園の開墾を奨励することも含まれています。製糖の面では、近代的な製糖工場の設置を提案し、市場面では外国からの砂糖に対する関税引き上げや販路の拡大を求めました。さらに、業界の教育の推進や産業組合の結成を提案し、甘蔗に関連する保険制度の整備も目指しました。

台湾総督府の対応

台湾総督府はこの「糖業改良意見書」に対し、農民組合の組織や統一甘蔗価格の制定を除いて大部分を受け入れました。政府は新渡戸の提案に基づき、製糖工場への補助、原材料の確保、そして市場保護策を積極的に推進しました。その結果、製糖業は急速に発展し、日本の統治下における台湾の主要な産業となりました。新渡戸はこの政策による効果として、産糖額と砂糖消費税の収入が向上すると予測していました。

しかし、実際には台湾総督府はアヘンや樟脳専売からの収入減少に直面し、財政難に見舞われました。このため、総督府は事業計画の一部を中止し、財政計画の大幅な見直しを余儀なくされました。それでも、新渡戸の提案が財政の自立化を目指す計画において重要な要素と位置づけられ、多くの課題に対する具体的な指針として機能しました。

結論

「糖業改良意見書」は、台湾における糖業の発展にとって重要な歴史的文書であり、当時の政策の舵を取る上での基盤となりました。新渡戸稲造の提案は、後の台湾の産業構造にも大きな影響を与えました。

もう一度検索