紅河ハニ棚田

紅河ハニ棚田

紅河ハニ棚田は、中国雲南省紅河ハニ族イ族自治州に位置する広大な棚田群です。元陽県を中心に、紅河県、緑春県、金平県など複数の県にまたがり、その総面積は約54,000ヘクタールにも及びます。哀牢山の斜面に広がり、最大標高1,800メートル、最大勾配75度という急峻な地形に築かれた棚田は、まさに圧巻です。

ハニ族の知恵と努力の結晶

この棚田を築き上げたのは、この地に移り住んだハニ族の人々です。8世紀頃から、気の遠くなるような労力と時間、独自の灌漑技術を駆使して、山肌を耕し、棚田を広げてきました。森林や霧といった自然を巧みに利用した棚田は、単なる農業システムではなく、巨大な循環システムとして機能しています。彼らは赤米を栽培し、スイギュウ、ウシ、アヒル、魚類、タウナギ、タニシなどの多様な生物を育み、ニワトリやブタの糞を有機質肥料として利用する複合農業を営んでいます。

山頂の神聖な森林から始まる灌漑用水路は、棚田全体を潤し、ハニ族の人々の生活を支えています。日干しレンガで作られた藁葺きの寄棟造の家屋は、独特の景観を創り出しています。

世界農業遺産、そして世界遺産へ

紅河ハニ棚田は、その文化的・景観的価値が認められ、国連食糧農業機関（FAO）によって世界農業遺産に認定されています。2011年には中華人民共和国が世界遺産に推薦し、2013年には第37回世界遺産委員会にて正式に世界遺産として登録されました。

登録基準は以下の通りです。

(3): 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(5): ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。

紅河ハニ棚田は、ハニ族の人々の知恵と自然との共生が生み出した、かけがえのない文化的景観です。

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