紅雀 (アルバム)

松任谷由実『紅雀』：変革と挑戦のアルバム

『紅雀』は、松任谷由実（ユーミン）が1978年3月5日に発表した5枚目のオリジナルアルバムです。結婚後、初のアルバムであり、ユーミン名義としては最初の作品となります。キャッチコピーは「1年5ヶ月の沈黙をやぶり第5弾ついに登場!! ユーミンの新しい世界がここに!!」。

制作背景と評価

本作は、ユーミン自身が「最も地味な作品」と語るように、これまでの明るいイメージから一転、都会的でシックな雰囲気が漂います。ルイス・ブニュエルの映画『昼顔』にインスパイアされ、「昼はドクターの妻、夜は娼婦」という二面性を持つ大人の女性を音楽で表現しようと試みました。しかし、その音楽性は発表当時、賛否両論を呼び、「松任谷正隆のバッド・プロデュース」と酷評されることもありました。

音楽性

ラテン音楽の要素を大胆に取り入れたことも、評価が分かれた要因の一つです。情事の後の倦怠感を歌った「罪と罰」などがその代表例と言えるでしょう。しかし、ユーミンは決して実験的な作品に終始したわけではありません。タイトル曲「紅雀」は、後にリアレンジされ、アルペンスキー世界選手権のテーマ曲となるなど、ユーミンの代表曲の一つとして広く知られています。

収録曲について

アルバムには、ユーミンの多彩な才能が凝縮された楽曲が並びます。

9月には帰らない：麻倉未稀がカバーし、ドラマの挿入歌にも使用された切ないバラード。
ハルジョオン・ヒメジョオン：アルバムと同時発売されたシングル。春の野に咲く二つの花をモチーフにした叙情的なナンバー。
地中海の感傷：スペインのバルセロナを舞台にした異国情緒あふれる楽曲。
白い朝まで：小雨の降る都会の公園で淋しさに耽る女性の心情を描いた、3分15秒のコンパクトな楽曲。
* LAUNDRY-GATEの想い出：かつての友人との想い出を綴ったノスタルジックなナンバー。米軍立川基地のゲートがモチーフ。

リリースと再発

『紅雀』は、LP、カセットテープ、CDでリリースされました。1985年には初CD化。1999年には、デジタルリマスタリングが施されたリマスターCDとLPがリリースされ、音質が大幅に向上しました。

まとめ

『紅雀』は、ユーミンの音楽キャリアにおいて、ターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。新たな音楽性への挑戦は、評価が分かれたものの、ユーミンの表現の幅を広げ、その後の活躍に繋がる重要な一歩となりました。地味と評されることもありますが、聴くほどに味わい深さが増す、隠れた名盤です。

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