紙をくれ

紙をくれ

「紙をくれ（かみをくれ）」は、学校の怪談として語り継がれる物語の一つです。地域や時代によって様々なバリエーションが存在しますが、共通する基本的なストーリーは以下の通りです。

あらすじ

ある夕暮れ時、一人の女子生徒が学校のトイレに入ります。静まり返った空間で、個室の中からかすかに「かみをくれ」という声が聞こえてきます。恐る恐る声のする個室に近づくと、確かに中から声が聞こえるので、彼女は近くにあったトイレットペーパーを声のする個室の上からそっと投げ入れました。

しかし、すぐにまた「かみをくれ」という声が返ってきます。再びトイレットペーパーを投げ入れると、さらに大きな声で「かみをくれ」と繰り返されます。何度入れても要求は止まらず、ついにトイレットペーパーが底をつきそうになり、生徒は思わず「もうないわよ」と返事をしました。

すると、それまでしつこく続いていた声が、まるで嘘のようにピタリと止まります。不審に思った生徒が個室のドアをノックしてみますが、中からの返事はありません。意を決してドアをそっと開けてみると、鍵は開いており、中には誰の姿もありません。

恐怖に全身が凍りつく生徒。その瞬間、「この紙じゃない…お前の髪だ！」という恐ろしい声と共に、便器の中から伸びてきた手が彼女の髪を掴みます。そして、そのまま便器の中に引きずり込まれてしまうのです。

考察

この怪談の起源は定かではありませんが、1977年に奥成達によって著された『怪談のいたずら』という書籍に、この物語を彷彿とさせるような、聞き手を驚かせるための方法が紹介されています。その方法は、まず以下のような話を語って聞かせるというものです。

ある殺人事件が発生し、被害者の遺体が汲み取り式の公衆便所に遺棄されました。事件は未解決のまま迷宮入りとなり、それ以来、夜にその便所で用を足すと、便器の奥底から「紙をくれ」という微かな声が聞こえるようになったといいます。恐る恐る紙を一枚便器に投げ入れてやると、また「紙をくれ」と声がします。次々と紙を投げ込んでいき、残りが後一枚となった時、どうしようかと迷っていると…

ここで、語り手は突然大声で「その紙じゃない、このカミだ！」と叫びながら、相手の髪の毛を引っ張るというものです。これはあくまで人を驚かせるためのいたずらですが、「紙をくれ」という怪談の原型の一つであった可能性も考えられます。

「紙をくれ」の怪談は、学校という身近な場所で起こる恐怖を描いている点、そして日常的な行為であるトイレの使用中に襲われるという点が、聞く人に強い印象を与える要因となっているのでしょう。時代を超えて語り継がれるこの怪談は、人々の心に潜む不安や恐怖を刺激し続けています。

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