細谷保雄

細谷保雄（ほそや やすお）は、1948年10月22日に三重県で生まれた日本の元プロ野球選手である。現役時代のポジションは捕手。高校野球、社会人野球を経て、プロ野球の道に進み、パシフィック・リーグの南海ホークスに短期間在籍した。

彼の野球キャリアは、地元の三重県で始まった。津商業高等学校に進学した細谷は、チームにおいて重要な役割を担った。捕手として守備の要を務める傍ら、打撃でも中心的な存在であり、クリーンアップの一角、特に四番打者を任されるなど、その実力は高校球界でも高く評価されていた。捕手でありながら打線の主軸を担うことは、当時の高校野球において稀有な存在感を示すものであったと言えるだろう。高校卒業後も野球への情熱は衰えず、社会人野球の電電三重へと進んだ。当時の社会人野球は、プロ野球選手を目指す者にとって有力な選択肢の一つであり、多くの才能が集まるレベルの高い環境であった。電電三重で細谷は、社会人野球特有の緻密さや戦略性を学びながら、プロの世界で通用する技術や精神力をさらに磨き上げていった。

電電三重での活躍がプロ野球スカウトの目に留まり、細谷はプロ入りのチャンスを得た。1968年、彼はドラフト会議を経ずに、ドラフト外という形で当時のパシフィック・リーグに所属していた南海ホークスへの入団を果たした。当時のドラフト制度は現在とは異なり、ドラフト外での入団も比較的多く見られた時代であった。ドラフト外での入団は、必ずしも上位指名選手のような大きな注目を集めるわけではないが、球団が特定の選手の隠れた才能や将来性を評価して獲得に至るケースであった。捕手というポジションは、野球において戦術の鍵を握り、投手との連携や状況判断能力が求められる重要な役割であり、南海ホークスは細谷にその適性を見出したのだろう。

プロ野球選手としてのキャリアは、1969年から始まった。背番号は「65」を背負い、一軍定着を目指して日々練習に励んだ。しかし、プロの世界は厳しく、一軍の試合に出場する機会は極めて限られたものとなった。彼のプロ野球人生において、一軍公式戦への出場はわずか2試合にとどまっている。これらの試合における彼の役割は、主に「偵察メンバー」であったと記録されている。偵察メンバーとは、試合開始前のスターティングラインナップに名前を連ねるものの、相手投手が発表された後、あるいは試合開始直前に、より有利な打者や守備力の高い選手と交代することを前提とした戦術的な起用である。これは、対戦相手の先発投手が試合開始直前まで明かされない場合に、自チームの打線構成を柔軟に変更するために用いられる戦術であり、細谷は捕手としての守備力や相手打者の分析能力などを買われて、この役割を任された可能性がある。しかし、実際に打席に立つ機会や、試合を通じて捕手として出場する機会はほとんど得られなかった。プロのレベルでレギュラーポジションを獲得することの難しさを痛感する数年間となった。

短いプロ野球でのキャリアを経て、細谷保雄は1970年シーズン終了後に現役を引退した。プロ野球選手としての道のりは短く、目覚ましい成績を残すには至らなかったが、三重県の高校球児から社会人を経てプロの扉を叩いた選手の一人として、その足跡は記憶されている。

細谷保雄は三重県の出身であり、多くのプロ野球選手を輩出している同県の出身者リストにその名を連ねている。また、彼が所属した南海ホークスは、球団名の変遷を経て現在の福岡ソフトバンクホークスへと繋がる長い歴史を持つ球団である。細谷は、その歴史の中で一時期を過ごした選手の一人として、球団史の一部を構成している。彼のプロ野球における詳細な年度別成績については、日本野球機構（NPB）が公式サイトで公開している個人年度別成績のページで確認することができる。

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