細馬宏通

細馬宏通：人間行動学とメディア文化を繋ぐ研究者

細馬宏通氏は、1960年生まれの日本を代表する人間行動学者です。現在、早稲田大学文学学術院教授として、表象・メディア論コースで教鞭を執っています。京都大学理学部を卒業後、同大学大学院理学研究科博士課程を修了。「人間の会話コミュニケーションを支える時間構造の研究」で博士（動物学）を取得しました。滋賀県立大学人間文化学部での教員経験を経て、2019年より現在の職に就いています。

幅広い研究領域：ジェスチャーからアニメーションまで

細馬氏の専門は、ジェスチャー分析と会話分析です。これらの分析手法を用いて、人間のコミュニケーションにおける非言語的な側面を深く探求しています。単なる言葉のやり取りだけでなく、身体の動きや表情、間など、多様な要素がコミュニケーションにどのように影響するかを解明しようとしています。

さらに、細馬氏の研究領域は、19世紀以降の視聴覚文化にも及びます。絵はがきやアニメーションなど、様々なメディアを通して、人々の視覚や感覚、そして社会文化がどのように形成されてきたかを考察しています。特に、アニメーション表現の研究においては、独自の視点を提示し、高い評価を得ています。

著作活動：多様なメディアと人間の関わりを考察

細馬氏は、数多くの著作を発表しており、その内容は多岐に渡ります。初期の著作では、絵はがきというメディアを通して近代日本の社会文化を考察した『浅草十二階 塔の眺めと<近代>のまなざし』(2001)や『絵はがきの時代』(2006, 2020)があります。近年では、『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか アニメーションの表現史』(2013)において、アニメーションにおける表現技法の歴史的変遷を詳細に分析し、アニメーションの表現力を多角的に考察しています。また、『介護するからだ』(2016)では、介護という行為を通して、人間の身体性やケアのあり方について鋭く論じています。

その他にも、『今日の「あまちゃん」から』(2013)、『うたのしくみ』(2014, 2021)、『二つの「この世界の片隅に」 マンガ、アニメーションの声と動作』(2017)、『いだてん噺』(2020)など、多様なテーマを扱った著作を精力的に発表し続けています。これらの著作を通して、細馬氏は常に人間とメディア、人間と社会との関わりを深く見つめ、独自の視点から考察を行っています。

共同研究と国際的な交流

細馬氏は、国内外の研究者との共同研究にも積極的に取り組んでいます。共編著として『ステレオ 感覚のメディア史』(1994)や『ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで』(2019)などがあり、多様な専門分野からの知見を統合することで、より深い研究成果を生み出しています。また、翻訳活動にも携わり、海外の研究成果を日本に紹介する役割も担っています。例えば、バイロン・リーブスとクリフォード・ナスによる『人はなぜコンピューターを人間として扱うか 「メディアの等式」の心理学』(2001)の翻訳は、人間とコンピュータとのインタラクションに関する重要な知見を提供しています。

まとめ：未来への展望

細馬宏通氏の研究は、ジェスチャー分析や会話分析といった人間行動学の専門分野にとどまらず、メディア史、アニメーション研究、介護論など、多様な分野に広がりを見せています。これらの研究を通して、氏は一貫して人間と社会、人間とメディアの複雑な関係性を解き明かそうとしています。今後の研究活動からも目が離せません。 氏の研究は、コミュニケーション、メディア、そして人間のあり方について、新たな視点と理解を提供し続けるでしょう。 @kaerusan のXアカウントやブログなども参考に、更なる情報を得ることができます。

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