結合度

結合度（カップリング）とは

結合度とは、ソフトウェア開発における重要な概念の一つで、プログラムの各部分（モジュール）が互いにどれだけ依存しているかを示す尺度です。結合度が低いほど、各モジュールは独立しており、変更や保守が容易になります。逆に、結合度が高いと、一つのモジュールの変更が他のモジュールに影響を与えやすく、システムの複雑性が増し、開発や保守が困難になる可能性があります。

結合度の重要性

ソフトウェア開発において、結合度は設計段階から考慮すべき重要な要素です。結合度が低いシステムは、以下の点で優れています。

保守性の向上: 一つのモジュールを変更しても、他のモジュールへの影響が少ないため、変更や修正が容易です。
再利用性の向上: 独立したモジュールは、他のプロジェクトで再利用しやすくなります。
テストの容易化: モジュールが独立しているため、各モジュールを個別にテストしやすくなります。
開発の効率化: 複数の開発者が並行して作業しやすくなります。

結合度の種類

結合度は、その程度によっていくつかの段階に分類されます。一般的に、以下の順で結合度が低くなります。

手続き型プログラミングにおける結合度

内容結合（Content coupling）: 最も結合度が高い状態です。あるモジュールが別のモジュールの内部データや処理に直接アクセスし、変更を加える状態を指します。これにより、依存関係が複雑になり、変更の影響範囲が広くなります。
共通結合（Common coupling）: 複数のモジュールがグローバル変数などの共有リソースを利用している状態です。共有リソースを変更すると、そのリソースを使用している全てのモジュールに影響が及びます。
外部結合（External coupling）: 外部から提供されたデータ形式や通信プロトコルなどを共有している状態です。外部ツールやデバイスとの連携に関連し、外部の変更が内部のモジュールに影響を与える可能性があります。
制御結合（Control coupling）: あるモジュールが別のモジュールの処理の流れを制御する状態です。制御フラグなどを介して処理を指示するため、モジュール間の依存関係が強くなります。
スタンプ結合（Stamp coupling）: モジュール間で複合データ構造（例えば、レコードやオブジェクト）を共有し、その一部のみを使用している状態です。使用しない部分の変更が、モジュールに影響を与える可能性があります。
データ結合（Data coupling）: モジュール間で基本的なデータ（例えば、数値や文字列）のみをやり取りする状態です。モジュール間の依存関係が低く、理想的な状態に近いとされます。
メッセージ結合（Message coupling）: メソッド呼び出しのようなメッセージパッシングによってモジュール間が連携している状態。引数を渡さないメソッドの呼び出しが該当します。モジュール間の依存関係は非常に低い状態です。
無結合（No coupling）: モジュールが全く相互作用しない状態です。モジュールが完全に独立しているため、最も結合度が低い状態です。

オブジェクト指向プログラミングにおける結合度

サブクラス結合（Subclass Coupling）: 親クラスと子クラスの間の依存関係であり、子クラスは親クラスに依存しますが、親クラスは子クラスを知らない状態。子クラスが親クラスに依存しすぎると、親クラスの修正が困難になることがあります。
一時的結合（Temporal coupling）: あるメソッドが他のメソッドに依存しており、正しい順序で実行しないとエラーが発生する状態。メソッド間の依存関係が強いため、変更が難しくなることがあります。

結合度と粒度、凝集度

粒度: 結合度は、システムを構成する要素（粒）間の結びつきの尺度です。粒度が高いほど、各要素が独立しやすくなり、結合度を低く抑えやすくなります。一般的に、粒度の高い設計が好ましいとされています。
凝集度: 結合度が低いほど、モジュール内の要素がまとまりやすくなり（凝集度が高くなり）、保守性や再利用性が向上します。結合度と凝集度は、密接に関連する概念です。

まとめ

結合度は、ソフトウェアの品質を左右する重要な要素です。結合度が低いほど、システムは柔軟で保守しやすくなり、開発効率も向上します。開発者は、結合度を意識した設計を心がけ、高品質なソフトウェア開発を目指すべきです。

参考文献

上田勲『プリンシプル オブ プログラミング 3年目までに身につけたい 一生役立つ101の原理原則』秀和システム、2016年3月29日。ISBN 978-4-7980-4614-3。

関連項目

粒度
* 凝集度

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