結城無二三

結城無二三の生涯

結城無二三（ゆうき むにぞう）は、1845年に甲斐国で生まれた明治時代のキリスト教メソジスト派の伝道師です。その活動は、彼の死後に息子の結城禮一郎が著した書籍『旧幕新撰組の結城無二三 : お前達のおぢい様』などを通じて広く知られるようになりますが、彼の新選組での実績については現代において議論の余地が残っています。

結城の幼名は米太郎（よねたろう）で、後に有無之助（うむのすけ）として知られるようになり、さらには無二三（むにぞう）という名を名乗るようになります。この名前には、自信に満ちた彼の性格が反映されています。特に、「無二三」は「俺ほどの豪傑は天下に二人も三人も居ない」という意味が込められています。

新選組隊士としての立ち位置

結城無二三は、新選組に所属していたとされていますが、その存在を裏付ける史料は見つかっていません。息子禮一郎が彼の新選組所属を記述しているものの、幕末期の記録には結城の名前が確認できないことが多く、他の資料と照らし合わせると彼が隊士だったという可能性は低いとされています。特に、慶応3年6月に発表された新選組の名簿や、他の同時代の記録には彼の名前は見当たらず、在籍が確認できる資料が存在しないため、彼が正式な隊士ではなかったと考えられています。

また、結城は新選組の隊士たちと一定の交流があったものの、武道に関する評価には矛盾があり、他の隊士たちについての情報が乏しいことから、彼の新選組での活動には疑義が持たれています。このことから、近藤勇や土方歳三との親交も、彼が実際に何らかの役割を果たしていたことを証明するものではない立場になり得ます。

坂本龍馬暗殺事件との関わり

結城無二三は坂本龍馬暗殺事件に関与していたという説も存在しますが、これもまた資料が不確かであり、彼が「元隊士」として言及される理由も疑問視されています。事件当日に新選組の幹部が他のことで動いていたため、隊士が勝手に動くはずはなく、結城の関与は薄いとされています。

維新後の伝道活動

明治2年、結城無二三はキリスト教に興味を持ち、カナダの宣教師C・S・イビーにより洗礼を受けます。時代背景としては、明治時代に入ってキリスト教が解禁されていたものの、一般の人々の間では偏見や誤解が多く存在しました。それにもかかわらず、結城はキリスト教の布教活動を精力的に行い、静岡県や山梨県での活動において大きな功績を上げたと言われています。

彼は特に「福音士」として、自由に伝道を行うことを許され、教会にとらわれることなく布教を行いました。熱心さと人柄で信者を集めた彼でしたが、説法や賛美歌の技術的な面では課題を抱えていたと言います。それでも、結城無二三の存在は当時のキリスト教信者にとって大きな支えとなりました。

人物としての結城無二三

彼の経歴を振り返ると、自信家でありながらも親切で思いやりのある人柄が伺えます。結城無二三は、正義感から見廻組に入隊した後も、南一郎という友人の死に際して立派な墓碑を建立するなど、人間的な側面も持ち合わせていました。加えて、明治の初期には迫害を受ける中で伝道を行い続け、胃がんで亡くなるまで精神的に強かったとされています。

結城無二三は、1912年にその生涯を終えました。日本における初期のキリスト教徒の一人として、彼の生涯は今なお語り継がれています。彼の活動は、宗教的な意義だけでなく、幕末から明治にかけての混沌とした時代に生きた一人の人間の生き様として、現在でも注目を集めています。

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