絞罪器械図式

絞罪器械図式の概要

絞罪器械図式（こうざいきかいずしき）は、明治6年2月20日に発布された太政官布告第65号であり、日本の死刑執行に使用される絞首器の図式及びその他の方法を示したものである。この文書は、現行の日本国憲法の下でも法律と同等の効力を持つ存在として認識されている。

1. 制定の背景

この布告は、日本国憲法や大日本帝国憲法が整備される以前の時代に発表されたものである。しかし、1961年の最高裁判所の大法廷判決において、この布告が死刑（特に絞首刑）についての基本的な執行方法を定めたものであるとされ、当時の法律としての効力を持つことが確認された。さらに、この布告は日本国憲法第36条で禁止されている「残虐な刑罰」に該当しないため、現行憲法下でも存続していることが認められている。

2. 内容の詳細

絞罪器械図式の中では、絞架全図や踏板表面図、機車、機車属鉄板図、絞縄鐶図など、具体的な構造を示すための図面が添付されている。特に注目すべきは、絞架全図が地上に設置されるものであるのに対し、実際の日本の執行施設では地下絞架式が用いられている点である。この違いについて、最高裁では現行の地下絞架式が被執行者の精神的苦痛を軽減する可能性があるとしている。

また、絞縄を解くタイミングについても、絞罪器械図式では「二分時死相ヲ験シテ解下ス」という指示があるが、現在の法律では死刑を執行した後、五分経過してから絞縄を解くことが定められており、後法優先の原則が適用されている。

3. 絞首刑の歴史

明治政府は1870年に従来の処刑方法である斬首に代わって絞首刑を導入することを決定した。この時点で導入された絞首器具は懸垂式のもので、死刑囚の首に縄をかけ、その先に重石を吊り下げて処刑する仕組みであった。しかし、この機構の不完全さから、受刑者が激しい苦痛を感じる問題が指摘されたほか、死刑が執行された者が蘇生する事例も発生した。これらの問題を受け、小原重哉はイギリスの刑具を参考にした新しい絞首台の模型を作成し、改正を提案した結果、絞罪器械図式の制定へとつながった。

4. まとめ

絞罪器械図式は、日本における死刑制度の歴史的背景を反映した重要な文書である。現代においてもその効力を持ち続けていることから、死刑の執行方法や法律に関する議論において、引き続き注目されるべき資料となっている。また、絞首刑に関する執行体制の進化と、倫理的な考慮が現在の法律に与える影響についても、今後の法制度や死刑制度の在り方を考える上で欠かせない要素となっている。

もう一度検索