絢爛たる流離

『絢爛たる流離』

松本清張による『絢爛たる流離』は、彼の才能が光る連作短編小説です。この作品は、1963年から1964年にかけて『婦人公論』に連載され、1964年3月には中央公論社から書籍として出版されました。小説は、戦前・戦中・戦後の時代背景を持つ物語で、3カラット以上のダイヤの指輪が様々な持ち主を渡り歩く中で、その持ち主たちが直面する様々な境遇を描いています。

概要

作品の初出時には、挿絵に新珠三千代の写真が使用されるという新しい試みがなされ、視覚的な魅力を加えています。清張は、この物語を書くにあたり、フランス映画『舞踏会の手帖』からインスピレーションを受けたと語っています。ダイヤの指輪を中心に、それに絡む人々の運命や心理描写が巧みに織りなされています。各編のタイトルは、それぞれ独自のテーマを持ちつつ、全体としての統一感を生かしています。

連作の各編は以下の通りです:
1. 『土俗玩具』
2. 『小町鼓』
3. 『百済の草』
4. 『走路』
5. 『雨の二階』
6. 『夕日の城』
7. 『灯』
8. 『切符』
9. 『代筆』
10. 『安全率』
11. 『陰影』
12. 『消滅』

テレビドラマ化

本作は、いくつかの部分がテレビドラマとしても映像化されています。1963年には、NHKの「松本清張シリーズ・黒の組曲」として2回にわたって放映されたエピソードのうち『小町鼓』と『走路』は特に知られています。これらの作品は、さまざまなキャラクターやストーリーが描かれ、それぞれ異なる演出が施されました。

また、1963年版では『百済の草』や『陰影』も放映され、異なる俳優陣による名演が視聴者の記憶に残る名作となりました。1987年には、テレビ朝日によって改めて映像化され、視聴者に新たな感動を与えました。この際のエピソード『美しい人妻の復讐』や『銀座の女の完全犯罪』といった話は、原作とはまた異なる視点から心の内面に迫るもので、松本清張の作品の奥深さを伝えています。

結論

『絢爛たる流離』は、松本清張の代表作の一つとして、時代を超えて愛され続けている作品です。ダイヤモンドというシンボルを介して人間の欲望や運命の不条理を描くこの作品は、短編ながら奥行きのあるストーリー展開を持ち、多くの読者や視聴者に魅力を与えています。

もう一度検索