統合全領域指揮統制

統合全領域指揮統制（JADC2）

統合全領域指揮統制、通称JADC2は、アメリカ国防総省とその関連機関が2030年を目指し進化させることを目指す新たな軍事戦略です。この構想は、AIや6Gネットワーク技術を活用し、軍事システムを革新することを目的としています。具体的には、陸海空のみならず、宇宙やサイバー空間、電磁波の妨害をも含めた全領域での統合された指揮統制を実現します。JADC2は、急速に変化する戦闘環境に対応するため、データ分析から戦術の立案、実行に至るまでのプロセスを迅速化し、効率を高めることを目指しています。

開発の背景

従来、異なる軍種によって運用されていた情報通信システムは互換性が少なく、状況分析から戦術策定、命令実行に数日かかることがありました。しかし、このプロセスでは未来に想定される戦闘の複雑さや兵器の性能に対処できないという指摘がなされていました。これを克服するため、国防総省は巨大IT企業や軍需産業と協力し、次世代のシステム開発に向けた取り組みを進めています。

2017年からはクラウドベースのデータ管理事業であるJEDIが始まり、互換性のあるネットワーク機能の実現に向けたシステム構築が行われました。さらに、人工知能センターや各種プロジェクトが設立され、次々と新しい戦略が展開されています。

システムの構成と特徴

JADC2の中核は、全軍の情報、監視、偵察データを迅速に共有するための低遅延ネットワークにあります。陸軍、空軍、海軍、宇宙軍全てのセンサーがネットワークに接続され、最高機密のJWICS（共同世界情報通信システム）とも連携が図られます。

具体的には、空軍の無人機や陸軍の防空システムなどが接続され、AIを使った敵国動向の予測が実現されます。これにより、情報は瞬時に伝達され、戦闘計画や戦術策定の自動化も行われます。特に、AmazonのAWSやMicrosoftのAzureを利用したマルチクラウド構成を取り入れ、様々なデータマイニング技術を活用することにより、リアルタイムでの情報処理が可能になります。

国際連携と共同開発

日本や他の同盟国との連携も重要視され、特に日本では自衛隊が陸海空の情報を一元化する「中央クラウド」の整備を進めています。2023年には米国防総省と共同で無人航空機の開発に関する合意が成立し、情報共有の強化に向けた動きが加速しています。

イギリスやオーストラリアとも連携が進んでおり、最新技術を駆使して共通の防衛システムを構築する取り組みが見られます。特に、自律型兵器やAI技術についての協力が焦点となっています。

民間企業と倫理的側面

一方で、技術協力には倫理的な問題も伴います。Googleなどの企業はAI技術の軍事利用に対して懸念を示し、内部での議論が行われています。また、自社の技術がどのように運用されるかについても透明性が求められており、各企業が倫理基準を持つことが求められています。

AIや軍事技術の進展は、社会に棘のある影響を与える可能性があるため、その利用についての慎重な議論が必要です。これからの安全保障環境において、JADC2は重要な役割を果たすと期待されていますが、それに伴う課題にも十分な注意が必要です。

もう一度検索