絶対戦争

絶対戦争について

絶対戦争は、敵を徹底的に打ち負かすことを目指す戦争の形態です。この概念は、戦争を単なる武力の行使としてではなく、敵を完全に敗北させることに特化した形態として捉えています。英語では「Absolute war」という呼称でも知られています。この概念は、戦争の本質や目的、さらにはその背景にある政治的意図を考察する上で重要です。

クラウゼヴィッツの理論

この絶対戦争の考え方は、プロイセンの軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツに起源があります。彼は名著『戦争論』の中で、戦争の本質を「拡大された決闘」と表現しました。これは、戦争の目的が相手に自らの意志を物理的に強制することであり、その結果敵の軍事力の完全な殲滅を目指すものであるという見解です。

クラウゼヴィッツは、戦争が単なる武力衝突にとどまらず、しばしば政治的目的に従属することを強調しています。そのため、絶対戦争が常に実際に行われるわけではないと述べています。この考えから、彼は「現実の戦争」という概念を提唱し、戦争が持つ多様な目的や枠組みを考慮に入れることの重要性を指摘しています。

絶対戦争の特徴

絶対戦争は、敵を完全に破壊し、その国家や兵力の存続を不可能にすることを目的とします。そのため、戦争が行われる際には戦力の投入が極端に多くなり、全力を挙げて敵を潰そうとすることが求められます。これに伴って、国家の全ての資源が動員されることが一般的です。

一方で、絶対戦争は持続可能ではないとも言えます。国家が全力を尽くして戦争を遂行する場合、戦闘が長期化すれば経済的な影響や民間人への影響が著しく、結果的に国家そのものが疲弊してしまうこともあります。このため、有限の軍事力、資源をどう運用するかという戦略的判断が要求されます。

絶対戦争と現実の戦争

「現実の戦争」とは、政治的な目的や外部的要因が絡むことで、絶対戦争の理念が必ずしも実行されない戦争のことを指します。政治的な妥協や国際的な圧力が働くと、戦争が制限戦争や限定戦争になり得ることを示しています。実際の戦争は、多くの場合このように動的で複雑な要因が絡んでいます。

関連文献

絶対戦争の概念をさらに深く理解するためには、クラウゼヴィッツの原著『戦争論』へのアクセスが不可欠です。また、野中郁次郎ほかの著した『戦略の本質　戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ』など、現代の視点からの考察も有益です。これらの文献は、戦争に関する理論に加え、実際の歴史的背景を理解する手助けとなります。

最後に

絶対戦争は、軍事戦略や国際関係を考察する上で避けて通れない重要なテーマです。その特徴や実行される条件を理解することは、歴史や未来の戦争を考える際の基盤となるでしょう。

もう一度検索