継続企業の前提
企業が将来も事業を継続し、存続するという基本的な考え方は、「継続企業の前提」、または「ゴーイングコンサーン」と呼ばれます。これは企業会計における最も基本的な原則の一つであり、株式会社だけでなく、様々な種類の組織体においても「継続事業の前提」や「継続組織の前提」など、その性質に応じた名称で同様の考え方が適用されます。財務諸表は、この継続企業の前提に基づいて作成されることが一般的です。なぜなら、もし企業が近い将来に事業を停止し清算されることになれば、資産や負債の評価方法が大きく変わる可能性があるためです。例えば、清算を前提とする場合、資産は売却時の評価額で計上される可能性が高まります。
したがって、企業の経営者は、財務諸表を作成するにあたり、まずその前提として、決算日から少なくとも1年間の期間について、自社が事業を継続できるかどうかを慎重に評価することが義務付けられています。この経営者による評価は、特定の会計基準が継続企業の前提に関する注記を要求しているかどうかにかかわらず、常に行われなければならない重要なプロセスです。さらに、企業の財務諸表が公認会計士などの第三者によって監査される場合、監査人は、経営者が行った継続企業の前提に関する評価が適切であったか、そしてその評価の根拠が妥当であるかを確認し、評価します。
経営者による評価の結果、企業の事業継続能力に重大な疑義を生じさせるような事象や状況が存在することが判明し、かつ、その事象や状況を解消または改善するための経営努力をしてもなお、事業継続に関する重要な不確実性が残ると判断された場合、多くの会計基準では、財務諸表に追加の情報を「注記」として記載することが求められます。この注記には、以下の内容を盛り込む必要があります。
継続企業の前提に重大な疑義をもたらしている特定の事象や状況の内容とその具体的な記述。
経営者がこの困難な状況に対処するために現在講じている、または将来講じる予定の具体的な対策。
上記の対策を講じてもなお、事業継続に重要な不確実性が存在すると判断される理由。
そして、当該財務諸表は、このような重要な不確実性が存在するにもかかわらず、継続企業を前提として作成されており、不確実性の影響が財務諸表の数値に直接反映されていない旨。
一方、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象や状況は存在するものの、それが企業の継続性に重大な不確実性をもたらすレベルではないと判断される場合には、財務諸表の注記ではなく、事業報告書など他の適切な場所で関連情報を開示することが求められる場合があります。
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる可能性のある事象や状況は多岐にわたりますが、主なものとして以下のような例が挙げられます。
財務状況関連：売上高が著しく減少している、継続的に営業損失を計上している、営業キャッシュ・フローが継続的にマイナスである、多額の経常損失や当期純損失を計上している、または債務超過の状態にある、など。
財務活動関連：買入債務（買掛金など）の支払いが滞っている、借入金の返済に関する契約条項に違反している、社債などの償還が困難である、新たな資金調達が計画通りに進まない、債権者に対して債務免除を要請している、売却を予定している重要な資産を処分できない、配当優先株式に対する配当の支払いが遅延または中止されている、など。
営業活動関連：主要な仕入先からの信用供与や取引継続を拒否された、重要な顧客や市場を失った、事業遂行に不可欠な権利（許認可、ライセンスなど）が失効した、事業にとって重要なスキルや知識を持つ人材が流出した、事業の継続に不可欠な重要な資産が物理的に損壊、喪失、または処分された、法令の改正などにより事業活動が著しく制限された、など。
その他：事業に関連して、企業の財政状態に重大な影響を及ぼす可能性のある巨額の損害賠償請求を受けている、企業のブランドイメージや信用が著しく悪化している、など。
この継続企業の前提という考え方は、民間企業だけでなく、公的な組織体にも適用されることがあります。国際的な監査基準においても、公的部門の主体における経営者の継続企業に関する評価の重要性が指摘されており、国際公会計基準（IPSAS）でも公的部門の主体が継続事業体として存続する能力について規定しています。公的部門における継続性のリスクは、営利目的で事業を行っている場合や、政府からの支援の縮小・打ち切り、あるいは民営化の可能性など、様々な要因によって生じうる可能性があります。資金調達の困難化や、サービスの提供に影響を与える政策決定なども、公的部門の継続性に重大な疑義をもたらす事象となり得ます。一方で、日本の独立行政法人については、その制度の特性上、継続企業の前提に関する検討が通常は必要ないと考えられており、これに関する会計監査基準には特別な規定は設けられていません。このように、継続企業の前提は、組織の種類を問わず、その将来の安定性を示す重要な指標であり、適切な評価と開示が求められる会計上の原則です。
したがって、企業の経営者は、財務諸表を作成するにあたり、まずその前提として、決算日から少なくとも1年間の期間について、自社が事業を継続できるかどうかを慎重に評価することが義務付けられています。この経営者による評価は、特定の会計基準が継続企業の前提に関する注記を要求しているかどうかにかかわらず、常に行われなければならない重要なプロセスです。さらに、企業の財務諸表が公認会計士などの第三者によって監査される場合、監査人は、経営者が行った継続企業の前提に関する評価が適切であったか、そしてその評価の根拠が妥当であるかを確認し、評価します。
経営者による評価の結果、企業の事業継続能力に重大な疑義を生じさせるような事象や状況が存在することが判明し、かつ、その事象や状況を解消または改善するための経営努力をしてもなお、事業継続に関する重要な不確実性が残ると判断された場合、多くの会計基準では、財務諸表に追加の情報を「注記」として記載することが求められます。この注記には、以下の内容を盛り込む必要があります。
継続企業の前提に重大な疑義をもたらしている特定の事象や状況の内容とその具体的な記述。
経営者がこの困難な状況に対処するために現在講じている、または将来講じる予定の具体的な対策。
上記の対策を講じてもなお、事業継続に重要な不確実性が存在すると判断される理由。
そして、当該財務諸表は、このような重要な不確実性が存在するにもかかわらず、継続企業を前提として作成されており、不確実性の影響が財務諸表の数値に直接反映されていない旨。
一方、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象や状況は存在するものの、それが企業の継続性に重大な不確実性をもたらすレベルではないと判断される場合には、財務諸表の注記ではなく、事業報告書など他の適切な場所で関連情報を開示することが求められる場合があります。
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる可能性のある事象や状況は多岐にわたりますが、主なものとして以下のような例が挙げられます。
財務状況関連：売上高が著しく減少している、継続的に営業損失を計上している、営業キャッシュ・フローが継続的にマイナスである、多額の経常損失や当期純損失を計上している、または債務超過の状態にある、など。
財務活動関連：買入債務（買掛金など）の支払いが滞っている、借入金の返済に関する契約条項に違反している、社債などの償還が困難である、新たな資金調達が計画通りに進まない、債権者に対して債務免除を要請している、売却を予定している重要な資産を処分できない、配当優先株式に対する配当の支払いが遅延または中止されている、など。
営業活動関連：主要な仕入先からの信用供与や取引継続を拒否された、重要な顧客や市場を失った、事業遂行に不可欠な権利（許認可、ライセンスなど）が失効した、事業にとって重要なスキルや知識を持つ人材が流出した、事業の継続に不可欠な重要な資産が物理的に損壊、喪失、または処分された、法令の改正などにより事業活動が著しく制限された、など。
その他：事業に関連して、企業の財政状態に重大な影響を及ぼす可能性のある巨額の損害賠償請求を受けている、企業のブランドイメージや信用が著しく悪化している、など。
この継続企業の前提という考え方は、民間企業だけでなく、公的な組織体にも適用されることがあります。国際的な監査基準においても、公的部門の主体における経営者の継続企業に関する評価の重要性が指摘されており、国際公会計基準（IPSAS）でも公的部門の主体が継続事業体として存続する能力について規定しています。公的部門における継続性のリスクは、営利目的で事業を行っている場合や、政府からの支援の縮小・打ち切り、あるいは民営化の可能性など、様々な要因によって生じうる可能性があります。資金調達の困難化や、サービスの提供に影響を与える政策決定なども、公的部門の継続性に重大な疑義をもたらす事象となり得ます。一方で、日本の独立行政法人については、その制度の特性上、継続企業の前提に関する検討が通常は必要ないと考えられており、これに関する会計監査基準には特別な規定は設けられていません。このように、継続企業の前提は、組織の種類を問わず、その将来の安定性を示す重要な指標であり、適切な評価と開示が求められる会計上の原則です。
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