維管束植物レッドリスト (環境省)

維管束植物レッドリストの概要

日本の環境省が発表した維管束植物レッドリストは、国内における維管束植物の絶滅危惧評価を示しています。このリストは、日本国内に生息する植物を対象としており、世界的には普通種である場合も含まれています。環境省は、維管束植物を「植物I」として分類し、それ以外の生物（蘚苔類、藻類、地衣類、菌類など）は「植物II」としています。

作成と評価のプロセス

レッドリストの作成に際しては、他の生物分類群とは異なる大規模な現地調査を行い、調査結果に基づいた定量的評価が行われます。特に、絶滅確率の推定は重要で、これは1997年に発表された世界初の試みでした。これにより、維管束植物の絶滅リスクを推定する科学的な基盤が構築されました。

歴史と変遷

このレッドリストは1997年に初めて発刊され、2000年、2007年と続けて改訂が行われました。1997年版では1,901種が評価され、2000年版では1,887種と一部の評価が見直され、2007年版では掲載種がさらに増加し、2,018種となりました。評価種の数は新たな調査結果や分類見直しによるもので、単なる絶滅危惧種の増加を示すものではありません。

評価対象種の基準

維管束植物の評価対象となる種は約7,000種であり、分類上の種、亜種、変種が対象となるため、品種は原則として除外されています。作成は、環境省が委託した専門家が集まる「絶滅のおそれのある野生生物種の選定・評価検討会」により行われます。この検討会では、植物に特化した調査方法と評価基準が設けられています。

調査方法と評価基準

現地調査は、過去10年の減少傾向を基にしており、減少率や生育地の面積、個体数などを定量的に評価します。調査方法は、国土地理院発行の地形図を用い、全国を4457のメッシュに分割し、各メッシュごとに現存個体数や減少率を記録します。これにより、より正確な評価が可能となります。

評価基準にはAからEまでがあり、減少率や個体数、生育地に基づく基準が用いられます。特にE基準は、絶滅確率の推定に基づくもので、種の個体数の変動や生息環境に対する調査結果が主要な要素となります。

絶滅確率の推定

絶滅確率の推定は、将来にわたっての種の存続リスクを評価するもので、様々な条件を考慮します。例えば、絶滅危惧IA類は10年後の絶滅確率が50%以上であるとされています。これにより、今後の保護政策の立案においても重要な情報が提供されます。

課題と意義

維管束植物レッドリストには、さまざまな課題（例えば、評価基準の一貫性や調査結果の客観性）がありますが、主観的な評価から客観的な形式への移行は、高く評価されています。特に、環境省版レッドリストが導入した基準は、大きな進歩をもたらし、種保護に向けた施策を進めるための基盤となっています。

このように、日本の維管束植物レッドリストは、植物保護に関する多くの知見を集約し、国内の生物多様性保全に寄与する重要なツールとなっています。

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