緋の稜線

『緋の稜線』は、佐伯かよのによる漫画作品で、1986年から1999年まで『Eleganceイブ』で連載されました。1994年には、第23回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しています。単行本は秋田書店から全25巻、文庫版は全16巻が刊行されました。また、この漫画を原作としたテレビドラマが、1998年に東海テレビの昼ドラマ枠で放送されました。

あらすじ

物語は、昭和初期から終戦、そして戦後の復興期にかけての東京を舞台に展開されます。旧家の三女として生まれた主人公・胡桃沢瞳子は、見合いの席で各務昇吾と出会い、彼の強引な行為によって各務家に嫁ぐことになります。夫の出征中、瞳子は義理の家族と生活を共にしますが、東京大空襲で義父を失い、家業の百貨店を守ることを決意します。戦後、夫との再会を果たすも、過去の出来事から離婚を申し出ます。しかし、昇吾の誠実な謝罪と想いを受け入れ、二人は改めて夫婦として向き合うことを決意します。

しかし、瞳子の幼馴染・新之助の出現が、物語に新たな波紋を投げかけます。新之助は、瞳子への歪んだ愛情から彼女を暴行してしまいます。その後、瞳子は妊娠し、長男・健吾を出産しますが、その子が誰の子であるのかは曖昧なままです。夫との間に次男・昇平を授かるも、瞳子は仕事に没頭し、夫婦の間にすれ違いが生じていきます。そんな中、昇吾は瞳子に瓜二つの芸者・芙美香と出会い、彼女を身請けします。芙美香は昇吾の子を妊娠しますが、結核に侵され、出産と同時に亡くなってしまいます。瞳子は、芙美香の子・望恵を自分の子として育てていくことを決意します。

物語は、子供たちの世代へと移り変わります。長男・健吾は百貨店の建て直しに奔走し、義理の従姉妹であるリサと結婚します。次男・昇平は外国を転々とした後、フランス人女性と結婚します。望恵は、母と百貨店を支えながら、自ら女性向け商品の開発に成功します。昇吾は飛行機事故で行方不明になりますが、物語の終盤で、無事発見されます。昭和の終わりとともに、瞳子の孫世代の新たな物語が始まろうとしています。

主な登場人物

各務（胡桃沢）瞳子（かがみ〔くるみざわ〕 とうこ）
本作の主人公。旧家の三女として生まれ、自立した女性を目指し、百貨店の再興やスーパーマーケットの設立に尽力します。ドラマでは、出版社の経営者となるなど、原作とは異なる設定が加えられています。
各務 昇吾（かがみ しょうご）
瞳子の夫で、百貨店を経営する家の長男。戦後、瞳子と共に百貨店を盛り立てていきます。ドラマでは、瞳子との関係に苦悩し、芸者に入れ込むなど、原作とは異なる側面が描かれています。
高杉（胡桃沢）寿々子（たかすぎ〔くるみざわ〕 すずこ）
瞳子の次姉。戦争で恋人と子を失い、戦後、新聞社に勤めます。その後、幼馴染の龍一と結婚し、戦争孤児を育てながら、夫の事業を支えます。
各務 和音（かがみ かずね）
昇吾の妹で、瞳子を毛嫌いしますが、後に互いを認め合うようになります。ドラマでは、新之助に恋心を抱くようになります。
嵯峨美 新之助（さがみ しんのすけ）
瞳子の幼馴染で、彼女に歪んだ愛情を抱いています。結核を患っており、病床で瞳子を暴行してしまいます。後に亡くなります。
各務 健吾（かがみ けんご）
瞳子の長男。実は新之助の子。百貨店の再建に尽力し、リサと結婚します。
各務 昇平（かがみ しょうへい）
瞳子の次男。外国を転々とします。
各務 望恵（かがみ もえ）
昇吾と芙美香の子。瞳子に育てられ、百貨店の発展に貢献します。

テレビドラマ

1998年に放送されたテレビドラマは、原作が連載中だったこともあり、後半はオリジナルの展開となっています。そのため、原作とは異なる結末を迎えています。ドラマでは、瞳子が経営する事業が百貨店ではなく出版社であったり、登場人物の設定や人間関係が漫画版と異なっていたりする点に注意が必要です。また、現在も地方局で再放送されるなど、人気を博しています。

この作品は、戦後の激動期を力強く生きる女性たちの姿を描いた物語であり、多くの読者・視聴者の心を捉えました。漫画とドラマ、それぞれの媒体で、その世界観を堪能することができます。

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