緑営

緑営の概要

緑営（りょくえい）は、清の軍の一部であり、特に漢人によって組織された部隊を指します。満州語では「ᠨᡞᠣᠸᠠᠩᡤᡞᠶᠠᠨ ᡨᡠᠷᡠᠨ ᡳᡣᡡᠸᠠᠷᠠᠨ」と表記され、これは翻訳すると「緑の旗の軍」となります。清が明の滅亡の後、1644年に山海関を越えた際に、先に降伏していた漢人によって成立しました。緑営は、軍事的な役割を持つ八旗の補助手段として設立されましたが、その後の歴史の中で徐々に軍の主力となっていきました。

起源と歴史的背景

八旗制度は、清の初代皇帝ヌルハチによって設立された軍事組織で、満州人を中心としたものでした。彼の後を継いだホンタイジは、モンゴル人と漢人の部隊を独立させ、各々の八旗として運営しました。1644年頃、清朝が征服を進める中で、八旗は30万人以上の規模に達したものの、全中国を支配するには力不足でした。そこで、清は明の旧兵を徴用し、漢人部隊である緑営を別組織として創設しました。

変遷と軍事的役割

当初、強力な八旗軍は次第に貴族化し、戦闘能力が低下しました。それに伴い、緑営は重要な軍事力として養成され、特に三藩の乱の際には40万人以上が参与することとなり、実質的な中核をなすようになりました。その後も大小の作戦で活躍しましたが、長期間の平和により腐敗が進行し、乾隆帝はその士気の低下を懸念しました。アヘン戦争や太平天国の乱では、緑営は戦闘力を喪失し、多くの敗北を喫しました。このことから清朝は新興軍の重要性を認識し、緑営の兵力は次第に削減されていきました。また、光緒帝の百日維新の際には、近代的な軍組織を宣言し、緑営は名実共に解体されました。

編制と構成

緑営は漢人により編成され、標・協・営・汛などの組織単位がありました。兵士は世襲制で、親の死後に子が軍に編入されていました。指揮は漢人士官が行い、組織の内部は明朝の制度が色濃く残っていました。主に歩兵部隊で構成されていましたが、騎兵や水師（海軍）も存在し、火器も装備していました。特に清の三藩の乱では、火器の利用が顕著になり、嘉慶年間の艇盗の乱では、緑営は海軍を多く用いて鎮圧に成功しました。また、アヘン戦争では、緑営の部隊が英国艦隊と衝突した事例もあり、その兵器として鳥銃や抬槍、大砲が使用されました。

兵力と配置

緑営は各省に駐屯し、鎮を最高戦力単位、営を最低単位としました。歴史文献により、清代中期には全国で66鎮、1169営が存在したことが確認されています。これらは緑営の強さと広がりを示すものであり、地域ごとに重要な役目を持っていました。最終的には新たな軍組織が誕生することで、緑営の役割は徐々に減少していきましたが、その歴史的意義は依然として重要です。

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