繁多進

繁多 進：日本の発達心理学を牽引した研究者

繁多進（はんたすすむ）氏は、1938年生まれの日本の著名な心理学者であり、発達心理学の分野における第一人者として広く知られています。鹿児島県奄美群島喜界島出身の氏は、横浜国立大学卒業後、東京都立大学大学院で修士課程を修了。1990年には「アタッチメントの発達とその規定因」に関する研究で、東京都立大学より文学博士の学位を取得しています。

学術研究での高い評価に加え、氏は教育現場においても多大な貢献を果たしました。江南女子短期大学助教授、横浜国立大学助教授を経て、英国ロンドンのタビストック・クリニックに留学。その後、白百合女子大学教授に就任し、長年にわたり後進の育成に尽力しました。2009年には同大学を定年退職、名誉教授の称号を得ています。

繁多氏の専門は発達心理学、特にアタッチメント理論に関する研究です。日本におけるアタッチメント研究のパイオニアとして、その研究成果は数々の著書や論文に結実し、日本の育児や教育に大きな影響を与えました。氏の研究は、親子間の心の結びつき、特に早期の子育てにおける親子の相互作用の重要性に焦点を当てています。アタッチメントの形成過程や、それが子どもたちの社会性や人格形成に及ぼす影響について、綿密な研究と分析を行いました。

主な著書・共編著・翻訳書

氏の著作は、親子の関係性、子育て、子どもの発達に関する実践的な内容から、学術的な分析まで幅広く網羅しており、一般向けから専門家向けまで、多くの読者に支持されています。主な著書には、『父親のやるべきこと10則』（サンマーク出版）、『親と子どもの人間関係―自立心をどう育てるか』（第三文明社）、『愛着の発達―母と子の心の結びつき』（大日本図書）、『繁多進のしつけの心理学』（あすなろ書房）、『おかあさん、大好き!』（三笠書房）、『乳幼児期の子育てQ&A』（第三文明社）などがあります。

また、共編著として『二歳～六歳の心理』（あすなろ書房）、『母性 こころ・からだ・社会』（新曜社）、『乳幼児発達心理学 子どもがわかる好きになる』（福村出版）、『子育て支援に活きる心理学 実践のための基礎知識』（新曜社）など、多くの書籍を世に送り出しました。

さらに、タビストック・クリニック出版の『タビストック子どもの発達と心理』シリーズの翻訳にも携わっており、英国の児童心理学の知見を日本の読者に紹介することに貢献しました。このシリーズは、0歳から9歳までの子どもの発達段階を詳細に解説したもので、日本の発達心理学の発展に大きく寄与しました。翻訳作品には、ローゼンブルース、ドウズ、オズボーン、デアー、オーショネッシーらの著作が含まれます。また、ヒラリー・ロダム・クリントンの著作『村中みんなで 子どもたちから学ぶ教訓』の翻訳も手掛けています。

繁多進氏の研究と教育活動は、日本の発達心理学、ひいては日本の育児と教育のあり方に多大な影響を与えました。その功績は、現在も多くの研究者や教育関係者によって高く評価されています。氏の著作は、親や教育者にとって貴重な指針となり続け、未来の子どもたちの健やかな成長に貢献し続けるでしょう。

もう一度検索