繊維問屋街 (岩本町・東神田)

繊維問屋街の歴史と変遷

東京・千代田区に位置する繊維問屋街は、岩本町から東神田にかけて広がる一帯で、主に繊維や既製服を取り扱う問屋が集まっています。この地域は、江戸時代中期に始まった古着市場からの歴史を持ち、各時代の変遷を経て現在の姿へと進化してきました。

江戸時代：柳原土手の古着商

繊維問屋街の発祥は、江戸時代の中期に遡ります。当初、神田川沿いの「柳原土手」には多数の露店が立ち並び、古着を扱う商人たちが活躍していました。江戸時代の古着商は限られた数に制約されており、新たに商売をするためには既存の古着商から許可を得る必要がありました。しかし、町人や商人達がこのエリアに住むようになると、露店も増え始めていきます。

明治6年には新政府によって柳原土手が取り壊され、その後は「官製古着市場」が設置されました。この市場は、古着の取引が行われる常設の場として多くの商人に利用されました。特に、古着の需要が高い時期には、この地域は多くの商人で賑わっていました。

明治から大正：ニーズの変化

時が経つにつれ、古着市場のニーズが変化していきます。まず、第一次世界大戦後には、和装から洋装への流れが加速しました。そのため、古着の需要は次第に減少し、新品の廉価な既製服を扱う店が増え始めました。岩本町では、競争が激しくなる中で、古着商が柳原通りに店舗を開くようになりました。

1923年の関東大震災は、繊維問屋街にも大きな影響を与えました。震災により多くの店舗が壊滅し、再建期では古着の露天が取り払われることとなります。それに伴い、地域の商業の中心は古着から既製服へと移行しました。昭和初期には、流行の最先端を行くダンスホール付きのビルも建設され、賑やかな街として再興しました。

戦後復興と現在

第二次世界大戦中には再び空襲の影響を受け、街は大きな損害を被りました。しかし、昭和30年代に入ると東京の衣料業界は復興し、技術革新も進むことで、繊維問屋街は再び賑わいを取り戻しました。ここで作られた既製服は全国に広まり、多くのデパートで展示され、ファッションの発信地となっていきました。

現在では、繊維問屋街は既製服問屋街として知られ、多様な店舗が集まる活気あるエリアになっています。和泉橋の南詰には「既製服問屋街発祥の地」という記念碑が立てられ、この地域の歴史を今に伝えています。古着市場から始まり、時代の流れに応じて商品の中心が移ったこの街は、洋服の普及がもたらした影響を如実に示す場所となっています。

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