羅須地人協会

羅須地人協会の概要

設立の背景

羅須地人協会（らすちじんきょうかい）は、1926年に宮沢賢治によって設立された私塾で、岩手県花巻市に位置しています。賢治は同年春、岩手県立花巻農学校を退職し、新たな教育の場を模索しました。この退職は、彼が教員として生徒に対し「農民になれ」と教えながら、俸給を受け取ることへの矛盾感から来たものとされています。

賢治は4月、実家から1.5km離れた場所にある別宅にて独居生活を始め、その後、周囲の若い農民たちと協力して羅須地人協会を設立しました。この協会の活動は、1926年の夏から始まりましたが、実質的には賢治一人が主導したものでした。

活動内容

設立されてからの協会では、賢治自身が農業に従事する傍ら、若い農民たちに向けた「農民講座」を開講しました。この講座では、植物や土壌についての科学的な知識を伝授し、賢治が構想した「農民芸術」に関する講義も行われました。これらの活動の一環として、彼は「農民芸術概論綱要」という文書を執筆しました。

さらに、賢治は地域の若者や子どもたちを招いてレコード鑑賞会や童話の朗読会を催し、地域文化への貢献にも力を注ぎました。農民による楽団の結成も考えていた賢治は、チェロを手に入れ、仲間とともに楽器の練習を始めましたが、オーケストラの演奏会は開かれませんでした。

また、農閑期にはバザーを開催し、地域の人々の生活を豊かにするためのアイデアを温めていました。残念ながら、賢治は1926年12月に上京することになり、この上京が活動の停滞を招くこととなります。

活動の終了と影響

若い農民たちが集まる一方で、保守的な考えを持つ年長の農民たちには賢治の活動を理解されることは少なかったため、協会の活動の広まりは次第に縮小していきました。1927年、賢治は協会に関して聴取されることとなり、その後活動は不定期になりました。さらに、協会の活動を支えるために借金を重ねたことが日を追うごとに彼の負担となり、健康を害していく要因にもなりました。

賢治は1928年に入ると、ついに健康を損ない実家に戻ることとなり、協会の活動は完全に途絶えました。この短い独居生活の期間が、賢治にとってはその思想や創作活動において重要なものと考えられています。

名称の由来

「羅須」という言葉の由来については明確な答えが存在しませんが、賢治が生前にその意味を「何もない」と語ったという証言もあります。一方で、協会に参加していた青年たちは「農民芸術学校」と呼称していたとも言われています。

教材と遺産

賢治は協会での講義用に「農民芸術概論綱要」を執筆しました。この文書は短い命題で構成されており、彼の芸術観を知る上で貴重な資料となっています。また、彼が描いた教材絵図も残されており、科学的な講義内容を視覚的に伝えるために使用されていました。

宮沢家の別宅

賢治が協会の活動を行った場所は、彼の祖父によって1904年に建設された別宅であり、改造の上で利用されました。この建物は後に復元され、一般公開されています。賢治の生涯を知る上で、ここは大変重要な場所として多くの人々に親しまれています。

結び

羅須地人協会は、宮沢賢治の生涯と思想の中で重要な位置を占めており、彼が地域社会において残した足跡を示すものです。彼の理念や活動は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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