美濃部美津子

美濃部美津子（みのべ みつこ）は、1924年1月12日に東京で生まれ、2023年8月26日に99歳でその生涯を閉じました。彼女は、昭和を代表する落語家、五代目古今亭志ん生の長女として、波乱に満ちた時代を生き抜きました。

美津子の誕生は、関東大震災からわずか4ヶ月後という、まさに混乱のさなかでした。父親は当時、売れない落語家であり、家庭は非常に貧しい状況でした。彼女は、業平尋常小学校、東京高等家政女学院を卒業後、貯金局に勤務しますが、弟の世話をするために退職を余儀なくされます。その後、父親の志ん生が満州へ渡り消息不明となる中、母親と共に、第二次世界大戦という混乱期を、落語家の家庭を必死に支え続けました。

1954年、美津子はニッポン放送に入社し、そこで専属となった父、志ん生の音源編集に携わります。1956年に退社した後は、志ん生の付き人として活動しました。また、ニッポン放送の同僚であった二代目三遊亭圓歌の息子と結婚するも、後に離婚。結婚生活は長くは続きませんでした。

志ん生が亡くなった後、美津子は弟たちの家に同居し、デパートなどで宝石を販売するマネキンとして働きます。晩年は、父や弟たちの権利関連の管理に携わり、彼らの思い出を綴ったエッセイを執筆しました。彼女の著作は、落語ファンだけでなく、多くの読者の心を惹きつけました。


彼女の著書には、『三人噺―志ん生・馬生・志ん朝』『おしまいの噺』（後に『志ん生一家、おしまいの噺』に改題）、『志ん生の食卓』などがあります。これらの作品は、家族の温かい眼差しと、落語の世界への深い愛情が感じられるものばかりです。また、CD『お姉さん 美濃部美津子 つかちゃん 塚越孝の 極め付き志ん生』や、DVD『志ん生復活！ 落語大全集』の執筆にも関わるなど、多岐にわたる分野で才能を発揮しました。

美津子の家族構成は、父が五代目古今亭志ん生、母は美濃部りん、妹は三味線豊太郎として知られる美濃部喜美子、弟には十代目金原亭馬生と三代目古今亭志ん朝がいます。また、姪には池波志乃、美濃部由紀子、姪孫には金原亭小駒がいます。1968年から1969年の間、三遊亭圓歌（二代目）の息子と結婚していたため、一時的に縁戚関係にもありました。

2019年には、NHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で、小泉今日子によって彼女の人物像が演じられ、再び注目を集めました。彼女の人生は、激動の時代を生き抜いた女性の強さと、家族への深い愛情に満ち溢れています。

美濃部美津子は、エッセイストとしてだけでなく、落語一家を支え続けた女性として、その名を歴史に刻みました。彼女の残した作品は、今後も多くの人々に読み継がれることでしょう。

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