美男奴隷

『美男奴隷』は、作家・梶山季之によって1968年より『週刊女性自身』（光文社）に連載された長編小説です。この作品は、梶山氏の他の作品、例えば『男を飼う』が様々なフェティシズムを広範囲に扱い、海外を舞台にした大河小説のような趣を持っているのに対し、テーマをSM（サディズムとマゾヒズム）や女装に絞り込み、また女性誌に掲載されたという背景から、女性の視点からの描写が非常に多いという特徴があります。

物語は、高校三年生の文芸部員である中里千絵を中心に展開します。彼女の周りには、国語教師の小鍋健吉、演劇部長で同級生の光岡万里子、女漁りを趣味とする大金持ちの企業家・藤島琢也など、個性的な登場人物たちがいます。特に重要な役割を果たすのが、琢也の四男でイラストレーターの藤島安雄です。彼は37歳でありながら女装を好み、ストッキングやハイヒールを身に着けた女装美少年を愛撫するという特異な性癖を持っています。さらに、女装の金髪美少年エリー（17歳）やジャクリーヌ（16歳）といったキャラクターも登場し、物語に深みを与えています。その他、画廊の経営者である田村順二郎や、週刊誌の芸能記者である栗原巻太郎といった人物も物語に絡み合います。

この小説は、単なる恋愛小説や性愛小説としてだけでなく、人間の欲望や心の闇、そして社会の歪みを浮き彫りにする作品としても読むことができます。特に、女性誌に掲載されたという点を考慮すると、当時の女性たちがどのような視点でこの物語を受け止めたのか、また、現代の読者にとってどのように解釈できるのかといった点も興味深いでしょう。

『美男奴隷』は、1969年に光文社から単行本として出版され、1987年には光文社文庫としても刊行されました。この作品は、SMや女装といったテーマを通じて、人間の複雑な心理や社会的なタブーに迫る、梶山季之の代表作の一つと言えるでしょう。現代においても、その衝撃的な内容と巧みな描写力は、多くの読者を魅了し続けています。

登場人物

中里千絵 - 高校三年生。文芸部員。18歳。
小鍋健吉 - 国語教師。
光岡万里子 - 千絵と同じ高校の同級生。演劇部長。
藤島琢也 - 企業家。女漁りが趣味の大金持ち。
藤島安雄 - 琢也の四男。イラストレーター。37歳。女装してストッキングやハイヒールの女装美少年を愛撫する。
エリー - 女装の金髪美少年。17歳。
ジャクリーヌ - 女装の美少年。16歳。
田村順二郎 - 画廊の経営者。
栗原巻太郎 - 週刊誌の芸能記者。



書誌情報

『美男奴隷』光文社 1969年
『美男奴隷』光文社文庫 1987年 ISBN 4-334-70544-8


関連事項

SM
* 女装

もう一度検索