義務消防隊

義務消防隊

かつて大韓民国に存在した義務消防隊（ぎむしょうぼうたい、朝: 의무소방대）は、韓国の徴兵制度に基づく代替服務として、消防活動、消防行政の補助、および消防署の警備などを担った組織です。略称としては義消（ぎしょう、朝: 의방）と呼ばれました。2002年に制度が開始されましたが、2023年6月13日をもって廃止されました。

制度の位置づけと選抜

義務消防隊は、韓国における兵役義務を果たすための一つの形態であり、徴兵制度の枠組みの中で代替服務として位置づけられていました。義務消防隊員となるのは、徴兵対象者の中から服務を志願し、選抜試験を経て最終的に合格した者に限られました。合格者は、まず韓国陸軍に入隊し、基礎的な軍事訓練を受けた後に、消防庁からの推薦を受けて義務消防隊へと転換し、残りの服務期間を消防署で過ごしました。この選抜および転換服務の仕組みは、かつて存在した義務戦闘警察の選抜方式と類似していました。

任務内容

義務消防隊員は、多様な消防関連業務において消防公務員を支援する役割を担いました。その主な任務は以下の通りです。

火災やその他の災害発生時における現場活動の補助
火災の警戒態勢の維持および鎮圧活動への参加
災害発生時における救助・救急活動の支援
消防用水施設の維持管理など、消防活動に必要なインフラの補助
文書の受付、発送といった消防行政業務の支援
通信および電算業務に関する技術的な補助
119安全センター（日本の消防署に相当）における所内勤務の補助
消防用水施設の維持管理の支援
地域の消防巡察活動および予防活動の支援
消防関連車両の運転支援など

これらの広範な任務を通じて、義務消防隊員は韓国の消防体制を側面から支える重要な存在でした。

階級

義務消防隊には、韓国軍における「兵」に相当する独自の階級体系が設けられていました。服務期間や経験に応じて、以下の階級が与えられました。

二防（にぼう、이방）：韓国陸軍の二等兵に相当
一防（いっぼう、일방）：韓国陸軍の一等兵に相当
上防（じょうぼう、상방）：韓国陸軍の上等兵に相当
首防（しゅぼう、수방）：韓国陸軍の兵長に相当
* 特防（とくぼう、특방）：韓国陸軍の下士（하사）の一部である一般下士に相当

制度に関する議論

義務消防隊制度は、徴兵制度を活用して消防業務という非軍事的な目的のために人員を確保する仕組みであったことから、一部で議論の対象となりました。具体的には、義務的な軍事訓練を受けた後に消防署での服務を強制する点が、国際労働機関（ILO）の強制労働に関する条約に違反するのではないか、という指摘がなされることもありました。これは、徴兵制に基づく代替服務制度全般が、国際的な労働基準や人権規範との整合性について問われる文脈の中で提起された問題提起の一つです。

廃止

韓国の消防体制において一定の役割を果たしてきた義務消防隊制度は、徴兵人口の減少や代替服務制度の見直しといった社会的な変化の中で、2023年6月13日をもってその歴史に幕を下ろしました。

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