義賊

義賊とは

義賊（ぎぞく）は、国家や領主からは犯罪者として扱われるものの、多くの民衆から支持を受ける個人や集団を指します。この概念の理解において重要なのは、義賊と単なる盗賊との違いです。イギリスの歴史家エリック・ホブズボームがこの二者を明確に分け、民衆からの支持を受ける義賊の存在を考察しました。ホブズボームは1959年に著書『原初的反乱者』を出版し、義賊を「社会派盗賊」としてカテゴライズしました。

義賊の定義

ホブズボームの定義によれば、義賊には次の2つの条件があります。まず、彼らは権力者からは明確に犯罪者と見なされるが、同時に民衆からは「正義を行う者」として評価されていること。また、義賊は民衆と密接な関係を持っていることが求められます。しかし、現代においては、民衆との関わりが薄い盗賊でもそのイメージが固定されている場合、義賊と見なされることがあります。これにより、義賊が「狭義」と「広義」に分けられることもあります。

歴史的背景

実際、ホブズボームは農業から工業にかけての社会の移行期に現れる義賊の意義に触れています。彼は義賊を、民衆の不満や怒りを受けて立ち上がる存在であり、民衆運動の先駆者と位置付けました。しかし、この意見はロビン・フッドやマフィア研究などから激しい批判を受け、広く受け入れられるには至りませんでした。

フランスの歴史家フェルナン・ブローデルは、著書『地中海』において、16世紀の盗賊の急増を観察し、その背後に存在する貧困や過剰人口を指摘しました。彼は、これらの盗賊行為を領主への農民暴動と見なし、国家の不公正な政治に対する民衆の復讐と考えました。このように、義賊についての理解は時代や地域によって異なります。

ロビン・フッドの義賊化

義賊の象徴とも言えるロビン・フッドについて、その認知度は時代と共に変わりました。15世紀までのロビン・フッドは、単なる貴族の象徴として描かれていたのですが、16世紀に入ると独立自営農民による「農民と領主の闘争」の物語へと変化しました。17世紀以降の作家たちによる民衆の味方というロビン・フッド像が形成され、彼は「民衆の反抗者」として知られることになりました。重要なのは、義賊と見なされるためには、実際に行動したかどうかよりも、民衆によってそのようにイメージされることが必要だった点です。

この義賊化の背景には、国家が絶対主義へ向かう中で圧倒される民衆が、ロビン・フッドの虚像に自らの願望を投影していったことがあります。社会情勢の不安定さが、義賊の支持者を生む土台となったのです。

フィクションにおける義賊

世界各地で、義賊はフィクションにも数多く登場しています。その中には、フランスのアルセーヌ・ルパンや日本の石川五右衛門など、多様な文化背景を持つキャラクターが存在します。また、ロビン・フッドのように特定の時代や地域に根ざした義賊の物語が語り継がれ、現代においても新たな解釈がなされ続けています。

一部の研究では、義賊は単に犯罪者であるだけでなく、社会的不正義に立ち向かう存在としての意義があることに注目されます。このように、義賊という存在は、単なる法外の行為を超え、民衆との関わりを通じて社会運動や価値観を形成する重要な要素とされています。

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