羽二重団子

羽二重団子

東京都荒川区に本店を構える株式会社羽二重団子によって製造・販売される和菓子、それが「羽二重団子」である。二百年以上の歴史を持つこの団子は、その名の通り、絹織物である羽二重にも似た、とびきりきめ細かく滑らかな口当たりを持つことが最大の特徴であり、この品質が名称の由来となっている。

特徴

羽二重団子は、伝統的な串団子でありながら、一般的な団子の概念とは一線を画す独特の様相を呈している。団子の粒は、よく見られるような完全な球形ではなく、厚みのある円盤状をしているのが視覚的な特徴である。提供されるのは二種類。一つは、香ばしい生醤油を塗って焼き上げた「焼き団子」。もう一つは、なめらかな舌触りのさらし餡を丁寧にまとわせた「餡団子」である。これらは通常、焼き団子と餡団子がそれぞれ同数ずつ組み合わされた一組として販売されるのが通例となっている。

歴史

羽二重団子の歴史は、江戸時代後期の文政二年（一八一九年）にまで遡る。初代当主である庄五郎氏が、現在の東京都荒川区西日暮里駅周辺にあたる武蔵野国谷中本村字居村の地に「藤の木茶屋」を開いたのが始まりとされる。創業当初、ここで供されていた団子は「大だんご」という素朴な名で呼ばれていた。しかし、その品質は次第に評判を呼び、特に団子のきめ細かさや滑らかさが、高級な絹織物である羽二重に例えられ、高く評価されるようになる。この評判が定着するにつれて、慶応四年（一八六八年）、二代目庄五郎氏の代には、提供する菓子の名称が正式に「羽二重だんご」となり、さらには屋号もそのまま「羽二重団子」と改められた。以来、今日に至るまで、この名称とともに伝統の味が守り継がれている。

文学との関わり

羽二重団子は、その長い歴史の中で、多くの日本の文人たちに愛されてきたことでも知られている。日暮里の地にゆかりのある者や、この団子の味に魅せられた者たちが、彼らの筆を通じてその存在を作中に記しており、数々の近代文学作品にその名を見出すことができる。例えば、泉鏡花の『松の葉』、司馬遼太郎の『坂の上の雲』、田山花袋の『東京近郊』、そして夏目漱石の不朽の名作『吾輩は猫である』といった著名な作品群に、羽二重団子が何らかの形で登場する。また、俳人としても名高い正岡子規は、『道灌山』や『仰臥漫録』といった随筆の中でこの団子に触れているほか、自らの俳句においても羽二重団子を詠み込んでいると伝えられる。このように、文学作品に描かれることで、単なる和菓子としての枠を超え、当時の文化や人々の生活に根ざした存在であったことがうかがえる。

現在

二百年を超える歴史を経て、羽二重団子は今なお多くの人々に愛され続けている。その伝統的な製法と独特の風味は、東京を代表する老舗の和菓子の一つとして、多くの人々に親しまれている。株式会社羽二重団子によって、その歴史と品質が守られ、未来へと受け継がれている。

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