羽州ぼろ鳶組シリーズ

羽州ぼろ鳶組：江戸の火消し、再建の物語

今村翔吾氏による小説『羽州ぼろ鳶組』は、2017年の文庫化、2018年のラジオドラマ化以降、高い人気を誇る作品です。舞台は江戸時代。かつて江戸随一の火消しとして名を馳せた「火喰鳥」こと松永源吾は、ある事件をきっかけに火消しを辞め、浪人生活を送っていました。そんな彼のもとへ、羽州新庄藩御城使の折下左門が現れ、壊滅状態にある新庄藩の火消し組の再建を依頼します。

源吾は少ない予算と、経験の浅い鳶たちを率いて、火消し組の再建に挑みます。新庄藩の火消しは、豪華な羽織を翻す大名火消しとは異なり、古びてぼろぼろの羽織を着ていたことから「ぼろ鳶組」と揶揄される始末。しかし、源吾は元力士の寅次郎、軽業師の彦弥、風読みの星十郎など、個性豊かな仲間たちを集め、彼らを鍛え上げます。

寅次郎は恵まれた体格を活かし、彦弥は軽業師ならではの身のこなしと跳躍力を駆使し、星十郎は風を読み、天文学にも精通した知識で火消しをサポートします。経験不足を補うべく、源吾は彼らの特技を活かし、チームワークを重視した訓練を施しました。鳥越新之助という頼もしい頭取並も加わり、ぼろ鳶組は着実に力を付けていきます。

彼らの活躍は次第に人々の目に留まり、「ぼろ鳶組」という呼び名は、揶揄から愛称へと変わっていきました。江戸では火事が頻発しており、その多くは怨恨や快楽による火付けでした。中には、特定の人物を狙ったものや、街全体を壊滅させる可能性のある不審な火付け事件も発生します。人々の生活を脅かす火災は、災害ではなく人災として人々に降りかかりました。源吾たちは、火消しとして炎と戦いながら、事件としての火災の調査、解決にも挑んでいきます。

物語は全11巻と幕間編から構成されており、それぞれの巻には個性的なタイトルが付けられています。ラジオドラマでは、『火喰鳥』から始まり、順次放送され好評を博しています。ラジオドラマ版では、筧利夫さん、山田キヌヲさん、小山貴司さんなど実力派の俳優陣が、個性豊かなキャラクターを熱演しています。

主要登場人物は、松永源吾を始め、彼の妻である深雪、頭取並の鳥越新之助、風読みの加持星十郎、元力士の寅次郎、軽業師の彦弥、そして彼らの活動を支える折下左門などがいます。また、幕府の要職である田沼意次や、火付け盗賊改方長官の長谷川平蔵なども重要な役割を果たします。

小説『羽州ぼろ鳶組』は、江戸時代の火消しの世界をリアルに描きながらも、人間ドラマの要素も豊かに盛り込まれた作品です。個性的なキャラクターたちが織りなす物語は、読者、そして聴取者を魅了し続けています。ラジオドラマも高い評価を得ており、原作小説と共に、多くの人に感動と興奮を与え続けています。

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