羽曾部卓

羽曾部 卓

羽曾部 卓（はそべ たく）は、1975年7月12日に生まれた日本の化学者です。現在の所属は慶應義塾大学で、工学博士の学位を有しています。彼の専門分野は多岐にわたり、電気化学、光化学、超分子集合体、機能材料といった領域で活発な研究活動を展開しています。

研究者としての歩み

羽曾部氏は、2000年に同志社大学工学部を卒業した後、さらなる学びを深めるため大学院へ進みました。2004年には大阪大学大学院工学研究科で博士後期課程を修了し、工学博士号を取得しました。博士号取得後、研究者としてのキャリアは海外からスタートします。2004年から2005年にかけて、アメリカ合衆国のノートルダム大学放射線研究所で博士研究員として勤務しました。これは、国際的な環境で自身の研究を深める貴重な経験となりました。

帰国後、2005年には北陸先端科学技術大学院大学材料科学研究科の助手に就任し、日本の研究機関での活動を開始しました。翌2006年には同大学マテリアルサイエンス研究科の講師に昇任しています。この時期には、科学技術振興機構（JST）の戦略的創造研究推進事業「さきがけ」研究者（併任）としても選ばれ、将来を嘱望される若手研究者として注目を集めました。2010年には、慶應義塾大学理工学部応用化学科の准教授として着任しました。慶應義塾大学では、自身の研究室を主宰し、後進の指導にも力を入れました。そして2020年、同大学同学科の教授に昇任し、現在に至ります。

主な受賞歴

その卓越した研究成果は、国内外で高く評価されており、複数の権威ある賞を受賞しています。主な受賞歴は以下の通りです。

2009年：PCCP Prize 2009 for Outstanding Achievement of Young Scientists in Physical Chemistry and Chemical Physics（イギリス王立化学会）
2009年：第23回若い世代の特別講演会賞（日本化学会春季年会）
2010年：科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞（文部科学省）
2014年：2014 SPP/JPP Young Investigator Awards（国際ポルフィリン・フタロシアニン学会）

これらの受賞は、羽曾部氏の研究が、国内外の科学コミュニティにおいて重要な貢献として認められていることを示しています。

研究内容

羽曾部氏の研究は、化学の中でも特に物質の光や電気に対する応答、そして分子が集まることで生まれる新しい機能の探求に焦点を当てています。大学院時代には、電子移動化学の権威である福住俊一教授の指導を受け、主に有機太陽電池の研究に精力的に取り組みました。この時期の成果として、ポルフィリンという分子を用いた高性能な有機太陽電池に関する研究論文が特筆されます。この研究は、2005年にアメリカ化学会誌（Journal of the American Chemical Society）に掲載され、有機半導体を用いたエネルギー変換分野における重要な貢献として広く知られています（J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 1216.）。

近年では、多環芳香族炭化水素のようなπ電子系を持つ有機分子に関心を寄せ、これらを基盤とした光学材料や電子材料の開発に注力しています。特に、以下の二つのテーマを中心に研究を展開しています。

機能性π電子材料およびその集合体の合成: 新しい構造を持つ有機分子を設計・合成し、それらが集まることでどのような機能を発現するかを探求しています。
時間分解分光法を用いた励起ダイナミクス評価: 光を吸収した分子がどのようにエネルギーをやり取りするか、その超高速な過程を詳細に追跡・解析する手法を用いて、材料の性能向上に繋がる知見を得ています。

これらの研究は、次世代の電子デバイスや光機能材料の開発に貢献することが期待されています。

羽曾部氏の研究室に関する詳細情報は、羽曾部研究室のウェブサイトで確認できます。

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