考える葉

『考える葉』について

松本清張の『考える葉』は、長編推理小説であり、1960年から1961年にかけて『週刊読売』に連載された後、1961年6月に角川書店から出版されました。この作品は、太平洋戦争中に隠された財宝や物資を巡って起こる連続殺人事件を描いたもので、戦争の混乱や人々の心の内面に迫る内容となっています。また、1962年には東映によって映画化もされています。

あらすじ

物語の主な舞台は、戦時中の日本の都市であり、中心人物である井上代造は、銀座で奇行を起こし、留置場に拘留されます。井上はそこで内気な青年、崎津弘吉に出会い、彼に親切に接し、就職の斡旋をすることになります。しかし、崎津は自らの過去や選択に迷いつつも、井上の影響で次第に巻き込まれていきます。最初は無口である崎津が就職先に向かう一方、井上の周囲では様々な怪しい人物が現れ、次第に事件が複雑化していきます。

物語は、偶然発見された右胸に刃物を受けた死体や、財宝の手がかりを握った浮浪者の謎を通じて展開していきます。未解決の事件が続いていく中、崎津は井上から指示を受け、代々木駅近辺をうろつくことになります。ところが、彼は警察に逮捕されてしまい、逃げるようにして捜査を始めます。

登場人物

本作には多彩な登場人物が登場します。孤独で人生に生きがいを見出せない崎津弘吉、井上代造の大柄な兄、青年社長の板倉彰英、老書家の村田露石など、それぞれが独自の背景を持ち寄ります。特に、井上の妹である美沙子の存在は、彼の行動に影響を与える重要な役割を果たします。

背景

著者の松本清張は、実際に戦後に事業を成功させた実業家の実体験をもとにして、物語の進行やキャラクターを描写していると語っています。この背景が、物語にリアリティを与え、その魅力を引き立てています。

映画化

1962年に公開された映画版『考える葉』は、東映によって製作され、佐藤肇が監督を務めました。原作を基にした映画は、期待が寄せられましたが、興行面では振るわない結果となりました。それにも関わらず、作品はその知名度から一部の評価を受け、松本作品の映像化に影響を与えるものとなったのです。

結論

『考える葉』は、松本清張の豊かな筆致によって描かれた推理小説であり、単なるミステリーを超え、戦時中の人間ドラマや心理描写を深く掘り下げています。読者は、崎津の疑念や井上の裏の繋がりに引き込まれ、最後まで目を離せない緊張感に包まれることでしょう。

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