耕地整理

日本の耕地整理：歴史、技法、そしてその発展

日本の農業において、耕地整理は生産性向上に大きく貢献してきた重要な営みです。本稿では、その歴史、様々な技法、法制化、そして耕地整理組合の役割について詳しく解説します。

古代からの区画整理

日本の農地区画の歴史は古く、古代の条里制に見られるように、既に計画的な区画整理が行われていました。条里制は、土地の効率的な利用と税収の把握を目的とした制度でしたが、同時に農地の基本的な区画を定める役割も果たしていました。江戸時代には新田開発が盛んに行われ、開発された土地に適した区画割りがなされました。沼地の干拓や原野の開墾など、様々な環境に対応した区画整備が進められたのです。明治維新前夜には、個々の農家が自らの耕作地の畦畔を改良する動きも活発化しました。これは、生産性向上のための自主的な取り組みでしたが、幕府による監視の目を逃れる必要もありました。

近代的耕地整理技法の登場

明治時代に入ると、私的な畦畔改良に代わって、水田所有者間の利害調整を伴う集団的な区画整理が盛んになります。この時代、近代的な耕地整理技法として「静岡式」と「石川式」が開発されました。

静岡式（畦畔改良）は、1872年（明治5年）、静岡県で名倉太郎馬氏らによって始められました。区画面積は2～3畝と比較的小さく、水路や道路が全ての区画に接しているわけではありませんでした。特徴的なのは、区画の方向を正確に東西南北に合わせる「正方位」化で、正条植えの効率化を重視した手法でした。

石川式（田区改正）は、1887年（明治20年）、石川県で開始されました。区画面積は6～8畝と静岡式より大きく、全ての区画が水路と道路に接する長方形に整形されました。排水改良による乾田化や牛馬耕の導入、資材運搬の効率化などが目的でした。区画の拡大と整形化は耕地の増加にも繋がり、小排水路の建設は乾田化と二毛作水田化をもたらしました。

耕地整理法の制定と耕地整理組合

耕地整理の重要性が増すにつれ、1899年（明治32年）に耕地整理法が制定されました。この法律は、耕地の利用増進を目的として、土地の交換や分合、区画形状の変更、道路や水路の整備などを規定しました。分散所有地の集団化、区画の整形化と拡大、道路の直線化などが目指されました。

明治42年には耕地整理法が改正され、事業主体が「耕地整理組合」という法人格を持つ組織となりました。この組合は土地所有者によって構成され、小作人は組合から除外されていました。国による補助や融資も受けながら、耕地整理事業は本格的に推進されることになります。

耕地整理の現代的意義

耕地整理は、単なる区画整理にとどまらず、農業生産性の向上、防災対策、農村環境の改善など、多様な効果をもたらします。現代においても、圃場整備事業として発展を続け、日本の農業を支える重要な基盤となっています。効率的な農業機械の導入や、省力化による労働力不足の解消にも貢献しています。将来に渡り、食料生産を持続可能なものとするために、耕地整理の役割はますます重要性を増していくでしょう。

参考文献

日本農業発達史 農業発達史調査会編
耕地整理事業から土地改良事業への展開過程 -事業内容と類縁用語の検討を中心に- 石井 敦
* 耕地整理の祖 名倉太郎馬 -その業績と生涯- 袋井市教育委員会（平成22年度袋井市協働まちづくり事業）

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