耳環

古墳時代の耳環：装身具としての役割と文化

概要

古墳時代後期から飛鳥時代にかけて栄えた日本では、独特の金属製耳飾り、耳環が制作されました。これらの耳環は、主に金、銀、銅といった素材で作られており、中には金や銀を鍍金した銅製品も見られます。さらに、薄い金や銀の板を巻いたものも存在しました。素材の違いによって、「金環」「銀環」「銅環」などと呼ばれ区別されています。

これらの耳環は、数多くの古墳や横穴墓から副葬品として発見されています。注目すべき点は、他の副葬品とは異なり、遺体の近くに置かれていたのではなく、実際に遺体の耳に装着されていたと推測されている点です。出土例は全国に広がり、そのサイズは様々です。純金や純銀で製作されたものは稀で、多くの耳環は金や銀の鍍金が施されたものです。

当時の埴輪にも耳環をつけた人物像が描かれており、男女を問わず身につけていたと考えられています。耳環は単なる装身具としてだけでなく、当時の社会における身分や地位、あるいは信仰などを反映している可能性もあります。

環付足金具との比較

耳環は、圭頭大刀や方頭大刀などの刀装具である「環付足金具」と形状が似ているとされています。しかし、環付足金具には刀に接続する「脚」と呼ばれる部品があり、刀の鞘と共に副葬されることが多い点が異なります。この違いは、耳環と環付足金具が異なる目的で作られたことを示唆しています。

江子田金環塚古墳

千葉県市原市にある江子田金環塚古墳は、純金製の耳環が出土したことで有名です。かつては「瓢箪塚古墳」と呼ばれていましたが、この貴重な発見によって「金環塚」と改名されました。この事例は、耳環が当時の社会において特別な価値を持っていたことを示す一つの証拠と言えるでしょう。

まとめ

古墳時代の耳環は、当時の工芸技術の高さを示すだけでなく、社会構造や文化、信仰などを理解する上で重要な手がかりとなります。様々な素材や形状の耳環が出土していることから、当時の社会には多様な装飾文化が存在していたことが分かります。今後の研究によって、耳環に関するさらなる知見が得られることが期待されます。

参考文献

上田薫「古墳時代の耳飾り」『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部紀要』第5巻、杉野服飾大学、2006年
豊島直博「020 飛鳥池遺跡出土刀装具について」『奈良文化財研究所紀要』第2011巻、独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所、2011年6月
豊島直博「環付足金具をもつ鉄刀の編年」『考古学研究』第60巻第3号、考古学研究会、2013年

関連項目

金環
耳飾り
イヤリング

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