聖エリザベート教会 (マールブルク)

聖エリーザベト教会：マールブルクのゴシック建築と聖女の眠る地

ドイツ、ヘッセン州マールブルクに位置する聖エリーザベト教会は、ドイツ語圏で最も初期の純粋なゴシック様式建築の一つとして知られています。聖女エリーザベト（チューリンゲンのエリーザベト）を称え、ドイツ騎士団によって1235年に着工、1238年に奉献されました。聖女の墓が安置されたことで、中世後期の重要な巡礼地となりました。

建築：ゴシック様式の傑作

教会は砂岩を用いた十字型平面を持つ壮麗な建築です。20メートルを超える高い天井はヴォールトで覆われ、身廊と両側の廊下が一体感を生み出しています。身廊外陣と翼廊の交差部には、中心に十字架像を配した石造りの内陣があります。教会の正面部は当初、ドイツ騎士団に捧げられていました。

特徴的なのは、高さ約80メートルの二つの塔です。北塔の頂上には星、南塔には馬に乗った騎士のオブジェが飾られています。内部には、聖女エリーザベトのゴシック様式祭壇を始め、数々の宗教芸術作品が収蔵されています。ケルン大聖堂の建築にも影響を与えたと言われる、ドイツゴシック建築の重要なモデルケースと言えます。

歴史：聖遺物と宗教改革

16世紀までは、聖女エリーザベトの聖遺物がこの教会に安置されていました。しかし、宗教改革後、ヘッセン方伯フィリップ1世によるプロテスタント化に伴い、聖遺物は教会から移され、現在、ウィーンの聖エリーザベト修道院やストックホルム、コシツェの市立博物館などに分蔵されています。マールブルクに残っているのは、空になった聖遺物箱とその覆いのみです。

多くの修道僧は16世紀にプロテスタントに改宗し、教会はプロテスタントの礼拝堂として利用されました。19世紀初頭には、カトリックとプロテスタントの両方の宗教儀式が教会内で同時に行われる時期もありました。第二次世界大戦後には、パウル・フォン・ヒンデンブルク大統領夫妻を始め、フリードリヒ・ヴィルヘルム1世やフリードリヒ2世の遺骸が一時的に安置された歴史もあります。

現状と保存活動

教会の維持と周辺建造物の改修のため、2004年に聖エリーザベト教会財団が設立されました。2006年には教会周辺の庭の発掘調査が行われ、墓や壁などが発見されました。現在も、教会と周辺環境の保存・修復に向けた活動が続けられています。

参考文献

ヘルマン・バウアー 「Sankt Elisabeth und die Elisabethkirche zu Marburg」 1990年 ISBN 3-89616-031-1
アンドレアス・ケストラー 「Die Ausstattung der Marburger Elisabethkirche. Zur Ästhetisierung des Kultraums im Mittelalter」 1995年 ISBN 3-496-01134-3
* エベラール・レピン 「Die Elisabethkirche in Marburg an der Lahn」 1999年 ISBN 3-7845-2913-5

聖エリーザベト教会は、その歴史と建築美から、現在も多くの観光客や研究者を魅了し続けている重要な文化的遺産です。

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