聖スティーブン教会

聖スティーブン・ウォルブルック教会：歴史と建築、そしていのちの電話

ロンドンの心臓部、マンションハウスに隣接して建つ聖スティーブン・ウォルブルック教会は、イングランド国教会に属する歴史深い教会です。その歴史は古く、ウォルブルックという地名はかつてこの地を流れていた川の名に由来します。教会は1096年以前に建設されたと推測されており、その長い歴史の中で幾多の試練を乗り越えてきました。

1666年のロンドン大火では焼失しましたが、名建築家クリストファー・レンによって見事に再建されました。しかし、第二次世界大戦中の空襲によって再び大きな被害を受け、1950年代になってようやく修復が完了しました。現在私たちが目にする教会堂は、幾多の修復を経て現代に受け継がれた貴重な建造物です。

特に注目すべきは、壮大なドーム状の天井です。8つのコリント式円柱と8つのアーチが透明な窓によって区切られ、神聖で荘厳な空間を演出しています。1941年の空襲で大きな損害を受けましたが、17世紀の建具類は奇跡的に残っており、当時の面影を偲ばせる貴重な遺産となっています。

教会内部には、多くの見どころがあります。祭壇は、20世紀を代表する彫刻家ヘンリー・ムーアの作品であるトラバーチン大理石で作られています。その洗練された造形美は、訪れる人々の心を静かに満たします。また、バロック建築の巨匠、サー・ジョン・ヴァンブラがここに埋葬されています。ヴァンブラはニコラス・ホークスムアと協力し、ステイトリー・ホームのカースル・ハワード、イーストン・ネストン、ブレナム宮殿、シートン・デラヴァルなど、イギリスを代表する数々の建築物を設計しました。彼の墓所は、建築史における重要な場所と言えるでしょう。

聖スティーブン・ウォルブルック教会は、単なる宗教施設にとどまりません。この教会は、現代社会における重要な役割も担っています。イギリスにおける自殺予防相談窓口「サマリタンス」の創設者、チャド・ヴァラーは、1953年から2003年までこの教会の司祭を務めました。1953年、自殺が増加していたイギリスにおいて、教会の事務所から始まったヴァラーによる電話相談は、後に世界的な自殺防止活動へと発展しました。日本の「いのちの電話」も、この活動に大きな影響を受けています。

聖スティーブン・ウォルブルック教会は、歴史、建築、そして社会貢献という三つの側面を兼ね備えた、ロンドンを代表する教会と言えるでしょう。その荘厳な空間、歴史的な遺構、そして人々のいのちを救う活動の拠点としての意義は、これからも多くの人々の心を深く揺さぶるに違いありません。

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