聖ニコラス聖堂 (マンハッタン)

聖ニコラス聖堂：歴史と再建の物語

ニューヨーク市マンハッタン、ワールドトレードセンター（WTC）のサウスタワー近くに位置していた聖ニコラス聖堂は、ギリシャ系移民や船員にとって心の拠り所でした。この聖堂は、船員、銀行家、パン職人の守護聖人であるミラのニコラオスを記念する場所であり、その歴史は深く、コミュニティにとって重要な存在でした。

歴史

1916年、ギリシャ系移民によってニューヨークの金融街に設立された聖ニコラス聖堂は、1922年に現在の場所で礼拝を始めました。聖堂の建物自体は19世紀初頭に建てられたものを利用しており、その周囲は駐車場に囲まれていました。この聖堂は、地域のギリシャ系コミュニティにとって、信仰の中心であると同時に、文化的な交流の場でもありました。

9.11テロによる崩壊

2001年9月11日、アメリカを襲った同時多発テロにより、WTCの崩壊に巻き込まれ、聖ニコラス聖堂は完全に崩壊しました。内部に至るまで破壊され、僅かに残ったのは傷ついたイコンや聖具だけでした。しかし、幸いなことに、聖堂の管理人と電気技師は事前に避難しており、人的被害はありませんでした。

崩壊後の活動

テロ後、聖ニコラス聖堂の信徒たちは、教会の再建に向けて活動を開始しました。2006年9月11日には、崩壊した聖堂の跡地で、テロの犠牲者のために祈りが捧げられ、同年12月6日には、教会設立90周年を祝いました。当時、信徒たちはブルックリンにある亜使徒聖大帝コンスタンチン・聖太后エレナ大聖堂で礼拝を続けており、聖ニコラス聖堂の再建に向けて、熱心に活動していました。

再建プロジェクト

聖ニコラス聖堂があった地区は、新ワールドトレードセンターの一部として再開発されることになりました。その際、リバティ・パークという公園が整備され、その一角に新しい聖ニコラス聖堂が再建されることが決定しました。新しい聖堂は、以前の場所から少し東に移動し、リバティ通り130番に位置することになりました。設計は、著名な建築家サンティアゴ・カラトラバが担当しました。彼のデザインは、イスタンブールのハギア・ソフィア大聖堂やコーラ修道院付属聖堂などのビザンティン建築からインスピレーションを得ています。新しい聖堂は、伝統的なビザンティン様式と現代的な要素を融合させた、美しい建築物として生まれ変わりました。

再建の道のり

2014年に始まった再建プロジェクトは、当初2018年の完成を目指していましたが、建設費の支払い遅延により、2017年に一時中断されました。しかし、その後、資金調達が再開され、2021年の完成を目指して内装工事などが進められました。そして、2022年に、ついに再建された聖ニコラス聖堂が成聖式を迎え、再びその門戸を開きました。この再建は、単なる建物の復興以上の意味を持ち、9.11テロからの復興の象徴として、世界中から注目されました。

現在の聖ニコラス聖堂

再建された聖ニコラス聖堂は、かつての姿を再現しつつ、現代の技術とデザインを取り入れた、美しい建築物として生まれ変わりました。この聖堂は、再びギリシャ系コミュニティの精神的な支えとなり、多くの人々に希望と慰めを与え続けています。聖ニコラス聖堂の再建は、テロによって失われた命を悼むと同時に、人間が持つ回復力と希望を象徴する出来事として、その歴史に深く刻まれています。



St. Nicholas Church at the World Trade Center （英語）

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